EU離脱と改憲論議

knockeye2016-06-24

 国民投票の結果、イギリスがEUから離脱することが決まった。「すみやかに離脱の手続きに入るように」というEUのすみやかな反応は、民主主義を堅持する立場からまったく正しい。国民投票の結果を覆すことはもちろん、それを軽んじるような素振りですら、民主主義の価値を損なうことになる。
 一方で、国のあり方を大きく変える、このような決定について、「過半数」が、果たして民意と言えるかどうかについては、反対している47%の気持ちを考えると、それで良いのかというのが、素直な感想。
 憲法の改正について、3分の2の賛成が必要なのは、条件が「厳しすぎる」という向きもあったと記憶するが、振り返って今の参院選で「改憲賛成が3分の2に達するかも」といった報道に触れると、「3分の2」というハードルは、案外に妥当な線なのかなとも思う。
 イギリスのEU離脱はまた、反グローバリズムの観点からは是とされるべき態度だろう。EUとイギリスの貿易に関税が設けられれば、国内の産業は競争に晒されずに済むだろう。が、輸出産業は不利益を被るだろう。
 しかし、「シティ」と呼ばれるロンドンの金融市場は世界金融の中心であるはずだが、そのイギリスが、世界に先駆けて(あるいは世界に背を向けて)、反グローバリズムに舵を切るのは、なんとも不思議。素人目には、バカげた選択に見える。
 反グローバリズムということでは、アメリカの大統領選でも、クリントンもトランプもTPPの見直しを示唆していて何かしらトレンドになりつつある気配だが、現に存在している「グローバル企業」の、グローバルな事業に、グローバルな法の網をかけるために、なんらかの国を超えたシステムがあるべきだし、その構築のためには、グローバリズムにただ反対しているだけでは、何も変えられないことだけは間違いない。
 個人的には、TPPの加盟国の複数の国にまたがって活動する企業には、労働条件と環境保護については、守るべきラインを設定すべきだと思う。その足がかりとしてTPPは価値があると思っている。企業のグローバルな活動を定義できなければ、規制もできないのだから、ただ反対しているだけでは、企業のやりたい放題だと思うのだが。
 週明けの為替市場は荒れる可能性がある。ポンドに売り注文を入れておけば、一攫千金も夢ではない、と思う人たちがひしめき合ってても不思議じゃないんだし。ということは、ポンドが大暴落するってことだし、ってことは、ポンドに買いを入れる人は益々いなくなるってことだし。それ以外にも、この影響がどのくらい深く遠く及ぶかは専門家でも読みきれないのではないか。
 結局のところ、政治家のビジョンと国民の民度で現実の政治は動く。サッチャーのビジョンが、これまでのイギリスを引っ張ってきたことが、かえって明瞭になったように見える。イギリスの政治はまた漂流し始めるのかもしれない。