「マイウエイ 12000キロの真実」


 カン・ジェギュ監督、オダギリ・ジョーチャン・ドンゴン主演の大作。
 ストーリーのスケールの大きさ、戦争シーンの迫力などはもちろんのこと、そのスケールの大きさの中の、人間の小ささを想像できる、カン・ジェギュ監督のイマジネーションの包容力に、むしろ、驚かされる。
天皇陛下、万歳」という台詞を、日本人として映画で見て、ウソがないと思ったのは「硫黄島からの手紙」とこの映画だけだ。どちらも外国人の監督である。日本人は、「天皇陛下、万歳」という台詞を、映画の中で、いまだにウソなく使えない。それは、その台詞の中のウソと真実のどちらも直視できないからだと思う。
 パンフレットにあるオダギリ・ジョーのインタビューで印象的なのは「約8ヶ月という長い時間を長谷川辰雄という人物を演じて、何か影響を受けたところはありますか」と聞かれて

 それは特にないと思います。韓国映画とはいえ日本人が観て嘘だと思って欲しくなかったので、日本人の感性ではおかしく感じるところは直させてもらったんです。だからむしろ、大袈裟な言い方になってしまいますが、僕が長谷川辰雄という人物に影響されたというよりも、影響を与えてしまったと言えるかもしれません。
 監督が色々なことを受け止めて下さる方だったので、話し合いをしながら様々なシーンを膨らませて行けたと思います。
 “韓国映画のなかの日本人”だったからこそ、ディスカッションは自分の責任だと思っていました。・・・

 主役の二人はもちろんのことだが、日本の軍人‘野田’を演じた山本太郎、そして、チャン・ドンゴン演じるキム・ジュンシクの親友‘イ・ジョンデ’を演じたキム・イングォンの演技が、ストーリーに厚みを加えた。ファン・ビンビンもかっこいい。
 ノモンハンシベリア抑留、ノルマンディー上陸作戦と、それぞれが独立した映画になるようなコンテキストを、戦場の個性まで描き分けながら、そのなかで、それでも、人間から焦点をずらさない、カン・ジェギュ監督の胆力は生半可ではないと思う。