『なぜ古典を読むのか』、『幻影の書』

knockeye2012-08-26

なぜ古典を読むのか (河出文庫)

なぜ古典を読むのか (河出文庫)

幻影の書 (新潮文庫)

幻影の書 (新潮文庫)

 イタロ・カルヴィーノ『なぜ古典を読むのか』。
 巻末、訳者須賀敦子のあとがき、文庫版あとがきは池澤夏樹
 ドニ・ディドロの『運命論者ジャック』、ディケンズの『われらが共通の友』、それからパステルナーク、レーモン・クノーについての章が特に印象に残った。
 ポール・オースターの『幻影の書』。
 シャトーブリアンの回想記を翻訳する主人公の大学教授と、12本の短編映画を残して失踪した、無声映画時代の忘れられた名優の生涯が、奇妙にシンクロしていく。
 死と罪の話のようで、じつは執着と悔いが全編を支配しているように思う。死者に執着するために、あえて罪を悔いたいかのように見える。
 ポール・オースターは、この小説中映画を実際に撮ってしまったらしい。
 ナポレオン時代の回想録、失踪した無声映画時代のスターをめぐるディテクティヴ、そして、主人公をめぐる事件の三層構造が複雑な味をしみ出させていて飽きさせない。