「脳内ポイズンベリー」

knockeye2015-05-09

 「脳内ポイズンベリー」は、映画を選ぶときの私の基準ふたつに、ふたつとも合致。観にいかないはずがない。
 私が映画を選ぶ基準、その1は、予告編が面白いこと。
 「あったりまえじゃねぇか、予告編なんて面白いとこつないでるに決まってるじゃねぇか」と思うか知らないが、これが、面白くない映画は予告編までみごとに面白くない。たとえば、山田洋次監督の「東京家族」の予告編は悲惨だった。だから観てない。観てないのでホントは名作かもしれない。その次の「小さいおうち」が名作だったので。
 その2は、ラブコメディーならとりあえず何でも。
 私はアメリカ映画より日本映画の方が好きだったりするけれど、ことラブコメディーという分野に関しては、ほぼアメリカの独擅場で、ヨーロッパもそこはそんなに強くない。
 日欧の恋愛映画は「泣かそう」としちゃうんだよね。前にも書いたけど、アイドルを映画で売り出すつもりなら、ラブコメディーがいちばんよさげなのに、なぜか泣かそうとする。それは、でも、笑わせるのは、作品のすべての面で、要求されるレベルが高いからということもあるだろう。
 アメリカのラブコメディーといえば、たとえば、メグ・ライアン(「ユー・ガット・メール」)とか、サンドラ・ブロック(「あなたは私の婿になる」)とか、ジュリア・ロバーツ(「プリティー・ウーマン」)とか、エイミー・アダムス(「魔法にかけられて」)とか、チャーミングで芸達者な女優の名前がすらすら出てくる。監督でも、故ノーラ・エフロンとか。こないだのウディ・アレンの「マジック・イン・ムーンライト」も極上だった。
 で、今回の「脳内ポイズンベリー」だけど、マジで「マジック・イン・ムーンライト」に引けをとらないと思う。日本にもこんな‘シュッとした’ラブコメディーが、さりげなく登場するようになったかなっていう感慨はある。
 いわゆる「脳内会議」をビジュアル化するっていう発想がまず秀逸だけど、それをどう料理するかは、作り手、演じ手の腕次第なんだから、予告編を見た段階では、そこは予断を許さなかったわけ。でも、それは難なくクリアしてた。
 西島秀俊神木隆之介、吉田羊、桜田ひより浅野和之の室内劇(脳内劇?)でもあるわけだけど、その掛け合いはこなれてた。あそこがちょっとでもぎくしゃくしたら台無しだから、すんなりやってるようでみごとです。
 真木よう子古川雄輝、成河の、恋もようは、実は、王道なんだけど、ただ、今の30代女性のあり方にすなおでウソがない。今のリアルを反映している。そのこともラブコメディーには重要だと思う。
 とくにわたくし、成河の演じた越智さんに感情移入してしまうわ。切ないわ。まあ、おいしいとも言えるわけだけど。オトコ人気はまちがいなくダントツでしょう。越智さん、次元大介コンドルのジョーですよ。
 古川雄輝は、女が惚れる年下のオトコとして、オトコ目線でも納得できる。そういうの大事だと思う。「紙の月」のときの池松壮亮については、ちょっともやもやっとしたとこあったんだよね。
 たぶん、この恋のゆくえそのものについては、女性同士で観たとしたら、その後、話が盛り上がると思うよ、良くも悪くも。というか、それこそ、脳内会議が盛り上がるかも。だから、そこまでふくめても上出来だと思う。観た後に会話のネタにならない映画なんてサイテーだもんね。