「アンジェリカの微笑み」

knockeye2015-12-05

 「アンジェリカの微笑み」てふ映画を、渋谷のbunkamura ル・シネマで観た。このイメージに惹かれて。

 結論を先に言うと、個人的にきらいじゃないけど、危険を冒して、人に薦める勇気はない。
 ことし、106歳で亡くなった、マノエル・ド・オリヴィエラという監督が、101歳の時に撮った映画で、しかも、オリジナルのシナリオは、1952年に書いたものだそうだ。
 それでちょっと謎がとけるんだけど、「いったい時代はいつなんだよ?」と、観ながら首を傾げてた。
 まず、主人公の青年が住んでるところなんだけど、「素人下宿」と呼ぶべきものだろう。大学教授とか、勤め人とか、まだ若い女性もシェアしていて、朝食は食堂に集まる。ジブリの「コクリコ坂から」にも似たようなのがでて来たけど、あれは、時代が、六〇年代の設定だった。でも、この映画では、クルマが今風だし、ポルトガルでは、まだこういうのあるのかなぁと思いつつ観ていた。
 それから、主人公のカメラが銀塩なんだが、見ての通りカラーで、それを自分で現像してるようだ。「えっ?どこで?」って、そういうことが気になる人は、みちゃダメ。「いま、ブックマッチでタバコに火をつけたよね!?」とか、いちいち突っ込むタイプはダメ。
 そこをなんとか切り抜けたにしても、主人公が撮ってる農夫の写真だけど、さっきのアンジェリカの写真に比べて、レベルが低すぎないか?。あの写真、大事だと思うんだけど。農夫の写真がひどすぎて、何も伝わらないんですけど。
 それもまだ呑み込んだとしても、アンジェリカと主人公の夢のシーン。確かにCG全盛時代に一石は投じていると思うけど、オーソン・ウエルズの時代でも、もうちょっと工夫できただろう?。実写版「鉄腕アトム」かと思った。
 くわえて、主人公の役者が、監督の孫なんだそうだが、なんて言えばいいかな?。不適切な言葉以外に適切な言葉が思いつかない。マイルドな言い方をすれば、素朴な味わいだね。
 これを切り抜けることができると、逆に面白くなってくる。松本人志の「R100」に出てきた監督を思い出しちゃうし、上方落語の「肝つぶし」を思い出して、あのサゲは洗練されてるなあとか、考えていた。
 しかし、これを100歳を超えた人が撮ってると思うと、枯淡とは、こういうことかなぁと思えてくる。後味はすっきりしている。でも、人には薦めない。
 bunkamuraなんで、開映まで、ミュージアムで「風景画の誕生」てふ展覧会に足を運んだ。

 この乳首のカワイイ聖母に一目惚れした。