「ナイスガイズ!」

knockeye2017-02-18

 ライアン・ゴズリングラッセル・クロウの「ナイスガイズ!」。
 「ドライブ」のライアン・ゴズリングが、まるで別人みたいにドジな探偵を演じるっていう、そのギャップですでに笑える。ラッセル・クロウとのコンビは、ルパン三世次元大介みたい。
 それも時代は1977年。ベトナム戦争は終わった。ジョン・レノンは生きてる(3年後に死ぬけど)。でも、ビッグ3にマスキー法が骨抜きにされてLAの空はスモッグでどんより。
 そんな時代特有の小ネタも含めて、脚本がすごくうまいと思ったら、監督・脚本はシェーン・ブラック、制作はジョエル・シルヴァーって、「リーサル・ウェポン」のコンビ。「リーサルウェポン」って、1987年だそうだから、その作者2人が久しぶりに映画つくろうってとき、時代を「リーサルウェポン」の10年前に戻してみたってのが面白いと思う。
 いつの間にかアメリカ映画には「デトロイトもの」って分野ができあがってるんじゃないだろうか。たとえば、「ロボコップ」あたりにはじまり、最近では「ドント・ブリーズ」、「イット・フォローズ」、「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」。デトロイトを舞台にしないとしまらない。デトロイトって街のすさんだ感じが、映画に強い香気を付け加えているのは間違いないと思う。
 この映画は、デトロイトが荒んでしまう前夜。この後、デトロイトがダメになっていくんだなってことが、いやというほどわかる。映画自体は確かにフィクションに過ぎないんだけど、事実、日本車が次々と排ガス規制をクリアしていくのに、ビッグ3は「科学的根拠がない」とかいって、排ガス浄化に取り組まず、ロビー活動で自分たちの既得権を守ろうとした。
 詳しく書くとネタバレになるから書かないけど、ライアン・ゴズリング演じるマーチが「そのうち日本製の電気自動車であふれかえるさ」みたいな、まるでフランシス・フォード・コッポラの「タッカー」めいたことを言う。でも、「タッカー」の予言と違ってこのセリフの渋いのは、微妙にずらしているところ。
 絶妙にずらすってのはやっぱ職人技なんでしょうね。たとえば、これもネタバレになるからふわっとした言い方しかできないけど、アメリアって女の子が残したメモについてすったもんだするんだけど、その行き違いが絶妙。
 また日を改めて書くけれど、いま、東京ステーションギャラリーで「パロディ」って展覧会がやってるんだけど、この映画はパロディではないね。もし、現代を舞台にしていたらパロディにならざるえなかったのかもしれない。でも、70年代に設定したことでコメディになりえたんじゃないかって気がする。どちらかというと、ボブ・ホープビング・クロスビーとかそんな系譜を思い出させる。ネタとアイデアをちりばめたコメディなんじゃないだろうか。
 来週は「ラ・ラ・ランド」を観るんでしょう?。ライアン・ゴズリングつながりでこれもご覧になったらいかがでしょう。ちなみにアメリアって子を演じているマーガレット・クアリーは、ハリウッド版「デス・ノート」のミサミサをやるそうです。