「ギミー・デンジャー」

knockeye2017-09-12

 ジム・ジャームッシュイギー・ポップ&ストゥージズを撮ったドキュメンタリー「ギミー・デンジャー」を、これは公開初日に観に行った。実は、その日の朝、ジム・ジャームッシュ監督の「パターソン」についての記事を書いてたら、出演者の一人である永瀬正敏が、舞台挨拶で「ギミー・デンジャー」を強く推奨ってのがあって、そういやあれいつだったっけってカレンダーを見たらその日で、あわてて映画館の予約サイトを見たら、たまたま席が空いてて(満席だった)、とるものとりあえず部屋を飛び出し、バスの中でチャックが開いてるのに気がついてヒヤッとした。ヒヤッとしたから気がついたんだけど。目の前に女子ふたりだったから危なかった。下着を履いてなかったから。
 イギー・ポップを知ったのは、デヴィッド・ボウイ経由だった。デヴィッド・ボウイイギー・ポップは、同じ頃にベルリンにいてアルバムを作ってたことがある。
 なんとなく好きで、DMMからレンタルしたCDをリッピングして聞いていた。だから、リアルタイムで聞いていないのはもちろん、どの頃のどの曲がどう好きとか言えるほど詳しくない。で、好きな人なら当然知っているようなこともこの映画で初めて知ったり。特に、ドラマーとしてキャリアをスタートしたのは知らなかった。
 子供の頃トレーラハウスに住んでて、小学校の工場見学かなんかで、デカいプレス機がドシーン、ドシーンと立てる音に感動したってのは、テレビのインタビューで見たことがあった。実際のところ、それがイギー・ポップの原体験だっつうのが、たぶん、私がイギー・ポップを好きな理由なんだ。
 でも、そのトレーラハウスで子供の頃からドラムを叩いていたとは知らなかったし、本場の黒人のブルースバンドにドラマーとして紛れ込んでいたのも知らなかった。ずっとフロントマンかと思ってた。映画では、彼らからいろいろなことを学んだし、貴重な体験だったけど、これは結局「彼らの音楽」で、これじゃない「自分たちの音楽」をやらなきゃいけないと思った、みたいなことを語っていた。
 のちのちパンクのルーツみたいに語られることになるイギー・ポップだけど、コアにあるそういうことを考えると、もっと大きな存在だと思う。ビートルズローリングストーンズみたいに爆発的に売れた存在じゃなかったからまだきちんと評価されていないのかもしれない。2010年には、ストゥージズとしてロックの殿堂入りを果たしているけど。
 それより何より、もっと知らなかったのはストゥージズ。イギー・ポップは、まだ知ってる人も多いと思うんだけど、ストゥージズは、寡聞にして初耳だった。聞けば聞くほど不遇だったと思うけど、ロックの殿堂にも、ストゥージズとして称されているし、ストゥージズこそ、イギー・ポップのオリジナルバンドだったんだね。
 でも、知らなくてもしょうがないと思う。アルバムは3枚発表しただけ。どれもチャート100位にも入ってないし、3枚目で契約解除されてる。それが今はロックの殿堂入りだから。イギー・ポップがソロとして成功するんだけど、ストゥージズの再評価が、オリジナルメンバーのギタリスト、ロン・アシュトンの生前に間に合ってよかった。当時のプロデューサーがすごいくやしそうに語ってたのが印象的だった。レコード会社の重役をスタジオに連れてきたんだけど、結局、解約になった。ロックの歴史を塗り替える演奏を聴いてるのに・・・と思ったそうだ。
 ロン・ハワードビートルズマーティン・スコセッシローリング・ストーンズジム・ジャームッシュがストゥージズって、わかるようなわからんような。
 それと、改めて思ったけど、イギー・ポップはいい人だわ。前歯が抜けてるインタビュー映像がある。イギー・ポップは、ステージダイブを発明した人なんだけど、ある時のダイブで、受け止めてもらえずに、前歯がクチビルに突き刺さったんだって。いい人だわ。