驚異の超絶技巧

knockeye2017-09-25

 東京駅近くでお昼になる場合、コレド室町にある「京つけもの西利」で、漬物寿司点心か京漬物御膳かを食べることにしてる。関東にいるとめったに味わえない白味噌の味噌汁がおいしい。通い始めの頃は京のお茶漬け(1080円)が気に入ってたのだけれど、そのうちにもっと色々お漬物が食べたいと思うようになって、今は、だいたい寿司点心。漬物のお寿司ってのがなかなかユニークだし、間違いなくヘルシーなので、罪悪感なく午後が過ごせるってのがいいじゃないの。

 それで、コレド室町を出て大通りを渡ると三井記念美術館なので、三井記念美術館のついでに西利に寄ることもあれば、西利のついでに三井記念美術館に寄ることもある。今回は西利のついでだった。今は、「驚異の超絶技巧」ってのをやってる。
 このブログには書きもらしたけど、去年の今頃にも、東京藝術大学大学美術館で、「驚きの明治工芸」ってのを見てるし、

去年の夏には京都の並河靖之七宝記念館も訪ねた。パリを魅了した並河靖之の七宝もだんだん需要が細り、潮時と見てさっぱり廃業した後は、娘に医者の婿をとって医院を開業させていた。今、記念館となっている建物は、長らく空き家で放置されていたそうなのだ。今、展示されている七宝の数々もまるまるその空き家の中で眠っていた。植治こと七代目小川治兵衛が手がけた通称「巴里庭」も荒れるに任されていた。
並河靖之七宝記念館
地下鉄東西線東山駅のすぐそばですけどね。京都って町の奥深さは底知れない。
 私の記憶では、明治の超絶技巧と言われる工芸品ブームの発端は、2009年に東京国立博物館で開かれた皇室の名宝展だったと思う。個人的にはあの時初めて並河靖之の七宝をはじめ、帝室技芸員の技術に驚嘆したのだった。
 その翌年に、六本木の泉屋博古館で、「幕末・明治の超絶技巧」と題した展覧会があり、170点にものぼる工芸品を展示した。正阿弥勝義の香炉、鈴木長吉の鷹など、私には、たぶんパリの人たちが初めて並河靖之の七宝を見た時の衝撃と同じだったと思う。まあ、便器にサインしたり、キリストの磔刑像を小便にひたしたりするのが真の芸術で、こちらは芸術ではないそうだけれど、私はこちらの方に強い衝撃を受けた。
 とはいうものの、流石にそろそろ食傷気味なんじゃないかとおもってたのだが、今回の展覧会で驚いたのは、なんと、こうした工芸の世界に若い人たちが挑戦しはじめている。

 この《タカサゴユリ》は、橋本雅也という人が鹿の角から彫り出したもの。

 これなんか有刺鉄線に草の蔓が絡んでいるみたく見えるけれど、すべて一本の木から彫り出してる。前原冬樹という人の作品。
 これがウィンザーチェアーであってもよいとも思うが、しかし、椅子ですらないという事に、反芸術の重みを感じてしまう。
驚異の超絶技巧