「人生はシネマティック!」

knockeye2017-11-14

 クリストファー・ノーランの「ダンケルク」は、この映画の予告編みたいなもの、膨大な予算の予告編をどうもありがとう、って、名の知れたレビュアーは書きにくいだろう。でも、たぶんそう書きたい誘惑に駆られると思う。
 「ダンケルク」は、ナチスにフランスが占領されたとき、連合軍の兵士を英国の民間の船が大挙して撤退させたって話だった。ロネ・シェルフィグ監督「人生はシネマティック!」は、まさにそのダンケルクの実話を、まだナチス空爆にさらされているロンドンで、戦意高揚のために映画化しようとする話。主人公はそのシナリオを担当する女性の新米ライター。
 三谷幸喜の「ラヂオの時間」を観たことがある人は、あのシチュエーションコメディを思い浮かべても良い。往年のスター俳優、英国当局、アメリカの配給会社から次々と無理難題をふっかけられシナリオがどんどん変わっていく。
 しかし、「ラヂオの時間」と違うのは、ロンドンの空爆が常に暗い影を投げかけていて、その被害で人が亡くなっていく。そのため、映画内映画も、単なる国策映画ではなく、だんだんと切実な願いに変わっていく。
 クリストファー・ノーラン監督のIMAXな映像を観た後、この映画内映画の、いかにも低予算な、しょぼくれた画面が実に良い。どちらがほんとに映画的なのかは、好みの分かれるところだろう。私はこちらの方がオススメ。クリストファー・ノーラン監督のは、あっちがまるで国策映画みたいだった。