- 作者: 藤原正彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/12/26
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ラマヌジャンは、「我々の百倍も頭がよい」という天才ではない。「なぜそんな公式を思い付いたの
か見当がつかない」という天才なのである
と書いている。
ラマヌジャンの独創の源泉についての、ラマヌジャン高等数学研究所のランガチャリ教授の見解が面白かった。
「チャンティング(詠唱)が独創の一因と思う」
という。
「インドでは長い間、教科書でさえすべて詩文で書かれていた」そうで、数学も「詠唱」されていた。
それがなぜ独創の源泉になりうるのかといえば
「詠唱により大量の知識を確実に蓄えることができ」
「一つの知識が孤立した点でなく、広がりを持って記憶」され、そして、面白いなと思ったのは
「折にふれ口ずさむことは、得られた知識や概念をもてあそぶということ」
だという。
大量の知識を互いに関連させつつ蓄えていて、それを常にもてあそんでいたことが独創につながったというのだ。
わたしたち日本人は、九九の原体験があるので、この意見を理解できるが、はたして西洋人がこれを理解できるかどうかわからない。西洋にも似たようなものがあるかもしれない。
知識について、それを記憶する形式美が重要だっていう発想は、考えてみる価値があると思う。