「シェイプ・オブ・ウォーター」

 レイトショーで、ギレルモ・デル・トロアカデミー賞を獲った「シェイプ・オブ・ウォーター」を観た。
 つうのも、週刊文春の今週号で宮藤官九郎が褒めてたから。
 なんでも、最近は気に入った映画を繰り返し観るのに凝ってるそうで、敢為の精神でもってアチャチャってなるより、良いってわかってる映画を繰り返し観た方が精神衛生上よろしいらしい。忙しいのだ。
 特に「スリー・ビルボード」は“俺の”「スリー・ビルボード」っていうくらい惚れ込んでいるらしいのだが、“俺の”「スリー・ビルボード」を抑えてアカデミー賞を獲った「シェイプ・オブ・ウォーター」は何ほどのものかと観にいったら、これまた優劣つけがたい傑作だったそう。それで、どっちがいいか確認しようと、その直後にまた「スリー・ビルボード」を観たそうだ。
 私も、「スリー・ビルボード」のあの苦味が気に入っていて、今回のアカデミー賞の作品賞と監督賞に加えて4部門を制覇した「シェイプ・オブ・ウォーター」は、SFだっつうし、どうなってんだろう?とは思ってた。どんなに優れたSF作品が、あの「スリー・ビルボード」のヒリヒリする今の感じを凌駕できるのかな?と。
 しかし、これは見事だったわ。
 ギレルモ・デル・トロ監督は、もうすぐ第2弾が公開される「パシフィック・リム」の第1作で初めて認識したのだったが、あれも良かったけど、ミア・ワシコウスカジェシカ・チャスティン、トム・ヒドルストンを起用して、ラファエル前派とイギリスの耽美主義の世界を紡ぎ出した「クリムゾン・ピーク」を観て、引き出しの豊富さに舌を巻いた。
 「シェイプ・オブ・ウォーター」も、一見するとSFで、確かにSFなんだけど、「スリー・ビルボード」と同じように、今を描いてるんですよね。
 キャスティングも上手。
 「しあわせの絵の具」のサリー・ホーキンス、「扉をたたく人」のリチャード・ジェンキンス、「ノクターナル・アニマルズ」のマイケル・シャノン、「ドリーム」のオクタヴィア・スペンサー、そして、どこかで見たのは確実だけど、どこだったか思い出せないマイケル・スタールバーグ
 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督といい、メキシコの映画監督は最近勢いがあるのかも。
 ちなみに、アカデミー賞だけでなく、ベネチア国際映画祭の金獅子賞も受賞したんですね。