年の瀬なので、今年の映画をふりかえります。『ボヘミアン・ラプソディー』とか『カメラを止めるな!』みたく、大ヒットした映画は言及するまでもないんだけど、いい映画だったのに、話題にならなかったなって映画を紹介できればなと思います。個人的に観た月ごとにわけてあるので公開時期とは微妙にずれています。
1月
『ベロニカとの記憶』
ジュリアン・バーンズの原作はすでに読んでいたんですけど、ジム・ブロードベンドの存在感で、小説より映画の印象が強くなりました。
ちなみに、ジム・ブロードベンドの若いころを演じたビリー・ハウルは、『追想』でも、シアーシャ・ローナンの彼氏を演じてます。ここには上げてないけど『追想』もいい映画でした。あげるべきだったかもだけど、小品すぎる気がしてためらってしまいましたかね。同じく新潮クレストブック原作(『追想』の原作はイアン・マキューアンの『初夜』)のうちどちらかと言われれば、私はこっちを上げたいという気持ち。
2月
『スリー・ビルホード』
これは言うまでもない映画の方です。フランシス・マクドーマンド、サム・ロックウェル、ウディ・ハレルソン。
『変態だ』
これが公開されたのはたぶん去年だったと思う。わたしは川崎のみうらじゅんの展覧会で。みうらじゅん企画・原作・脚本。安斎肇監督。みうらじゅんって、とりあえず、天才なんだなってわかる作品。
3月
『素敵なダイナマイトスキャンダル』
ヒットしたのかしなかったのか知らないけど、熱量が高い一方で、ディテールにこだわっているのが嬉しくなりました。横尾忠則にあこがれながら、キャバレーの看板を描きまくってるころがコアなんだと思います。
4月
『ペンタゴン・ペーパーズ』
スティーヴン・スピルバーグが『レディープレイヤー1』の制作をいったん中止して、撮影チームごとアメリカに連れて帰り、わずか5ヶ月で完成させた。メリル・ストリープ、トム・ハンクスという二大スターのスケジュールが空いていたのも奇跡的。
5月
『ボストン・ストロング』
主演のジェィク・ジレンホールが製作にもかかわっている。原題は『stronger』と比較級になっていて、この邦題の戦意高揚的な雰囲気に対するアンチテーゼにもなっている。日本では「ボストンストロング」って言葉自体が知られていないからこうなるのは仕方ないかも。対テロ的な映画ではなく、自己肯定感に欠けた主人公の再生がテーマになっている。
6月
『30年後の同窓会』
『6才の僕が大人になるまで』のリチャード・リンクレーター監督。『フォックス・キャッチャー』のスティーブ・カレル、『トランポ』のブライアン・クランストン、『マトリックス』のローレンス・フィッシュバーン。特に、スティーブ・カレルがすばらしい。
『ザ・スクウェア 思いやりの聖域』
『フレンチアルプスで起きたこと』で鮮烈に登場したリューベン・オストルンド監督の、その次回作で、是枝監督の前年にパルムドールを獲得した作品。美術館によくいく人はけっこう笑えると思う。
『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』
サリー・ホーキンスでは、アカデミー賞を獲得した『シェイプ・オブ・ウォーター』よりこちらの方が好き。最後に紹介されるモード・ルイス本人の動画を見たとき、「えっ、サリー・ホーキンス?」と思った。
『パンク侍、斬られて候』
脚本を書いた宮藤官九郎が「こんな映画を作った時点で勝ち」と。
『小津4K』
『晩春』、『麦秋』、『東京物語』を観て、『晩春』はハッキリ反戦映画だと思いました。
7月
『心と体と』
『万引き家族』がパルムドールなら、こちらはベルリンの金熊賞なのに、たぶん、屠殺場のシーンがあるというだけで敬遠されたと思う。
『女と男の観覧車』
ウディ・アレンの映画としてはあまり話題にならなかったかもだけど、たぶん、"Me too"が影響しただけじゃないかと。
『菊とギロチン』
今年の日本映画では、これを先ず推したいと思います。東出昌大が演じた「口だけ」の革命家が「摂政暗殺」と口走る。たぶん、それだけで敬遠されたのかもな。
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』
スティーヴ・カレルは、『30年後の同窓会』と同じ人とは思えない。
『ブリグズビー・ベア』
ルーク・スカイウォーカーのマーク・ハミルが「乗ってる」ってことでしょう。
8月
『カメラを止めるな』
日本が世界に誇る低予算ギャグ映画。
『サバービコン』
ジョージ・クルーニー会心の一作なんじゃないんだろうか?。コーエン兄弟とジョージ・クルーニーが組むと大概すべるんだけど、今回のぶっ飛び方はすごい。評価は散々ですけど、それも含めて笑える。ジョージ・クルーニーが裏方に回って、主役をマット・デイモンがやったのが良かった。
9月
『判決、ふたつの希望』
パレスチナ難民の今が垣間見える、レバノン映画。
『それから』
キム・ミニの演じる大学生が、出版社に就職して、1日で辞める、その経緯。『カメラを止めるな!』より低予算だと思う。
10月
『きみの鳥はうたえる』
佐藤泰志の原作を大胆に読み換えている。原作者が故人だから遠慮がないともいえるが、でも、30年とかの時を経て、小説が熟成されてるっていう、なかなか得難い経験をした。
『音量を上げろタコ!なに歌ってんだか全然わかんねえんだよ!!』
三木聡作品は見逃さないようにしてる。前作の『俺俺』がかなり実験的だったのに比べて、今回はストレートでサービス精神満載。三木聡版『スター誕生』。J popのアーティストたちが提供した楽曲も本気。
『ムタフカズ』
フランスのバンド・デシネを原作に、日本のスタジオ4℃かアニメ製作、草なぎ剛、柄本時生、満島真之介などが声優を務めた。
11月
『search/サーチ』
PCモニターの画面だけで展開することが話題になったけど、けっこう本格的な推理劇で、二転三転する展開に引き込まれた。
『クレイジー・リッチ!』
主要キャストがすべて東洋人なのに、全米で大ヒットした。オーソドックスなシンデレラストーリーだけど、いま、オールドワールドでは、こんなシンデレラストーリーにリアリティを感じられないんだと思う。
『華氏119』
マイケル・ムーアの映画といえば、昔は笑いながら観たものだが、いまは、涙なくして観られない。
『a ghost story』
このくらい非正統的でないと、わたしたちは自分の生死について納得できない?。『クレイジー・リッチ』と対照的。
『ジャクソンハイツへようこそ in Jackson Heights』
全く説明のないドキュメンタリーなので、私、ちょっと誤解したかもしれない。gentrificationを食い止めようとしている活動家と、make the road NEW YORKの活動家は別かも。
12月
『ボヘミアンラプソディー』
これは現在進行形でヒット中。
『アリー/スター誕生』
いろんなレビューを見てると「大スターが落ちぶれてゆく・・・」みたいな書き方をしてるけど、このレディ・ガガ版は違うと思う。アリーがジャックに「ヤキモチなの?」と尋ねるシーンがある。
『パッドマン』
生理用品がモチーフだからって敬遠するのは惜しい。