日韓関係の本質

 一歩引いてみると、子供の喧嘩にしか見えない。発言するのが恥ずかしくなってきます。
 しかし、ここで、一つだけもっとも本質的で、心しておかなければならないことを確認しておきたいと思います。
 それは、「わたしたち」は「戦争の被害者だ」ということです。たしかに、日本人は自分たちが戦争の被害者だとはいいにくい。しかし、そういうべきだと思います。
 ある人はこういうかもしれない、「私たちは戦争の被害者だが、あなたたちは戦争の加害者だ」と。また別の人はこういうかもしれない、「私たちは戦争の加害者だが、あの戦争は正しい戦争だった」と。
 それは、どちらも間違いです。わたしたちは戦争の被害者でしかなく、そうでしかありえない。だから、戦争は避けなければならないんです。
 「わたしたち」は「戦争の被害者だ」という認識は、少し前の世代までは、きちんと共有されていたと思います。金大中大統領は、公の場で日本語を話すことをいとわない人でしたが、「昭和天皇に戦争責任はない」と語っていたのを聞いたことがあります。テレビでですよ、もちろん。
 こういうことを書くと、今ではまるで、とんでもない右翼のように聞こえるのかもしれないのですが、冷静になって考えてみれば、昭和天皇に限らず、戦争責任の問題は、東京裁判で決着している。そこから、戦後秩序が構築されてきているわけなんです。
 戦後、二十年、五十年、七十年とたってなお、天皇の戦争責任のあるなし、侵略戦争か否かなどということをうだうだ言っているのは非常に愚かしい。
 戦争に勝った連合国が、裁判で天皇に戦争責任はなかったと言ってるんだから、それはないんですよ。そして、初めて「戦後」がスタートできたはずなんです。でなければ、日本人はいまだにoccupied Japanのままのはずです。昭和天皇は縛り首になっていたかもしれない。
 A級戦犯靖国神社に祀られてから天皇靖国に参拝しないのは当然です。天皇A級戦犯を「参拝」するなんてことがもし起きたら、戦後秩序そのものが土台から壊れてしまう。「戦争犯罪者を参拝する」などという行為は、よほど無知蒙昧な人間のすることです。違いますか?。
 もう一度言いますが、「わたしたちは戦争の被害者」です。「戦後世界」とは何かと言えば、戦争の被害者が、戦争の加害者を葬り去った後の世界のことです。
 なので、戦後世界には戦争の加害者はいない。左翼が「日本人は戦争の加害者だ」というのは、したがって間違いだし、右翼が「あの戦争は侵略戦争ではなかった」というのも間違いです。
 こう考えた上で、日韓関係をながめてみると、まず、慰安婦問題は、そもそも、日本人の慰安婦もいたのだし、韓国人の兵士もいたわけですから、はじめから、日韓二国間の問題ではありえない。
 謝罪するしない、賠償するしないにかかわらず、韓国政府は何の関係もないんです。そもそも国家間の問題ではないものを国家間の問題てあるかのように言っているからプロパガンダだと言ってるんですが何か間違ってますか?。
 韓国人の慰安婦もいたのと同じように、韓国人の兵士もいた、にもかかわらず、自分たちは被害者でお前たちは加害者だという態度は明らかに間違いです。
 前にも書いたことですが、むかし、小泉今日子が韓国のテレビ番組に出た時、ホストのふたりが酔っぱらった上に、アガってしまって、殴り合いのけんかを始めたのを見たことがあります。韓国では文化人であるはずのいい歳のおじさんが、日本のアイドルにアガってしまっている。
 もし私がそのテレビを見ている韓国人だったとしたら、恥ずかしくて死んでしまいたくなると思いました。しかし、それが、ほんとに当時の、ほんの二十年くらい前の韓国のすがただったんです。記憶から消してしまいたいかもしれません。俺たちは被害者だ、あいつらは加害者だと思いたいのはよくわかる。しかし、間違ってます。
 戦争中、韓国は日本の属国だった。連合国にいたわけではない。中国は連合国にいて、そして、戦争に勝った。でも、韓国は、日本の側にいて、しかも属国で、そして、負けた。それだけ。中国には勝利があった。だから、日本にコンプレックスを抱かない。でも、韓国には勝利もなければ正義もない。ただ、宗主国である日本が負けたから独立できただけ。そのコンプレックスから逃れられない一部の人が、わけのわからないことをわめいている。それが、慰安婦問題の本質です。
 今の韓国は、日本から見てもうらやましいくらいの経済大国になっているのに、なぜそのような愚昧なコンプレックスを抱き続けなければならないのか、日本人にはよくわからない。レーザー照射の問題にしても、ちょっと謝れば済んだことなのにそれができない。わたしには、小泉今日子にアガって酔っぱらってたあの文化人の姿が思い出されます。
 日韓関係において韓国が間違っている点は「自分たちは被害者だが、お前たちは被害者ではない」という考え方、そして、日本側の間違いは、「あの戦争は間違いじゃなかった」という態度です。
 もういちど戦後の出発点に戻らなければならないでしょうか?。戦後世界は、「侵略戦争の加害者はすべて縛り首にして、被害者たちで再構築した平和世界」以外ではありえません。
 したがって、韓国の挺対協の態度も、日本の日本会議の態度も、ともに戦後秩序に対する挑戦だということになるでしょう。戦後、国際社会が営々と築き上げてきた秩序を破壊しようとする態度は間違っていると私は思います。