平塚市美術館で秋野不矩展が開かれている。2019年の12月1日(日)まで。浜松の秋野不矩美術館が来年の3月まで休館だそうなので、その間、こっちで主要な作品が観られるみたい。
秋野不矩、小倉遊亀、片岡球子、三岸節子、日本の女流画家は世界に誇れる感じ。先般、国立西洋美術館でやってたフィンランドの女流画家展みたいに、日本の女性画家展って世界を巡回してほしいですよ。
去年、小倉遊亀を観たのも平塚市美術館だったし、ほかにも、石田徹也、長谷川潾二郎、グスタボ・イソエ、伊東深水、など、平塚市美術館は、なかなか渋い選択でみせてくれる。
去年の岡村桂三郎展を観ましたか?。圧巻でした。
秋野不矩は、若いころの《紅裳》のころから、構想も画力も高く評価されてきたに違いないと思うけれど、それでもやはり、晩年、インドを描き始めてからの絵がひとつ越えている。
《ガンガー》とか《渡河》などガンジス河を渡る水牛の群れを描いたものはマスターピースと呼ばれていい。
それは、近世の絵師たちが描いた数多くの龍の絵の原型が、もしかしたら、ここにあるという幻視のような感動かもしれない。が、もちろん、秋野不矩自身はそんなことは言っていない。
これは紀元前2世紀の仏教遺跡バールフットの女神ヤクシニー。薬師如来の原型だとだれでもそうおもうだろう。秋野不矩は、しかし、仏教以前の民間信仰をここに観ている。ことばがまとわりつく以前のイメージの力に自己の源流を探り当てている。
この≪黄土≫は、グジャラートの西北、カッチ地方に点在する藁ぶきの家の中、暗がりに目を凝らして見えた光景を描いている。壁一面の装飾、手製の刺繍やミラーで飾られた女たちの服。乾いた土の中で息づいているこうしたひそやかな美しさは、写真では描けないものだろう。
秋野不矩は、インドの土から岩絵の具を自作していたので、この黄土の色は、実際にカッチ地方の黄土の色なのかもしれない。
11月2日 14:00~15:00には、秋野不矩美術館を設計した藤森照信の講演があるそうだ。申し込み不要で先着150名というから、そのきになれば聞くことができると思う。
『藤森照信と磯崎新の茶室建築談義』はほんとに面白かった。
- 作者: 磯崎新,藤森照信
- 出版社/メーカー: 六耀社
- 発売日: 2015/04/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (5件) を見る
秋野不矩の絵本の原画も多数展示されていた。なかでも、『いっすんぼうし』は、この人の日本画家としての正統性と革新性を納得させるものだと思う。
同時開催されている常設展では、久野和洋の≪地の風景・道のかたち≫がすばらしかった。
また、岡村桂三郎の≪百眼の魚 18-1≫が一点だけ展示されていた。