『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』がびっくりするほどクォリティーが高かった件

 この監督、脚本、主演のフィリップ・ラショーがかなり面白い人みたい。
 日本のアニメってハリウッドで実写化すると必ずこけますよね。必敗。「ドラゴンボール」、「マッハGO!GO!GO!」「攻殻機動隊」。なのに、フランスで作ったら何でこんなに面白いの?って話になるが、フランス・アメリカということではなくて、単に、フィリップ・ラショー個人の「シティハンター」愛なのかもしれない。
 オリジナルストーリーなんだけど、事前に脚本を見せられた原作者の北条司が、原作に使いたいくらいだと絶賛したそうだ。
 ちょっとハードルを上げすぎてるかな。原作の熱烈なファンは何というのか分からない。わたしももちろん「シティハンター」の原作マンガは知っている程度で、通読精読したわけではない。しかし、もしまったく「シティハンター」を知らない人が見ても、ギャグ映画としてのクォリティーはそうとう高いと感じると思う。
 ジャパニメーションの系統を離れて比較すれば「キックアス」「ハングオーバー」「宇宙人ポール」とかに負けてない。かっこよくて、しかも笑えるという点では「キックアス」がいちばん近いかもしれない。気が早いようだが、これこのまま全米公開いけるんじゃないの?。
 「シティハンター」は、フランスでも「クラブ・ドロテ」というテレビ番組のなかでアニメが放映されていて、フィリップ・ラショー監督もこどものころから慣れ親しんでいたそうだ。そういうわけで、この実写版がフランスで公開されるにあたっては、フランスのファンたちからは懐疑的な意見が寄せられていたそうなんだが、いざ公開されると168万人を動員する大ヒットになった。
 そのへんのフランス国内の反応については↓このブログがくわしい。

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 吹替え版のせいもあり(字幕版はないみたい。スピード感を考えると正解だと思う。ちょっと日本の声優陣の存在感を見せつける形になってる)、フランス人が演じているのを忘れるくらい。というより、日本のアニメ版が、はたして北条司の原作をここまでみごとに昇華していたのかとか、日本のアニメーションは、日本の漫画のコンテンツの豊富さに依存しすぎていて、原作をアニメ化する作業がマンネリ化しているんじゃないかという疑念が頭に浮かぶほどだった。
 時代を感じさせるのは、この映画の中で、一部、冴羽獠の主観で展開するスタントがあるんだけど、公式サイトのインタビューで監督が語っている、ネットで見つけたスタント集団というのは、あのシーンの人たちなんじゃないかと思う。
 プロアマにこだわらないボーダーレスな感覚がじつのところフランスらしいのかもしれない。これがハリウッドだと、アクターの労組からクレームが来るんじゃないかとか気にして採用できないかもしれない。小道具の仕事に口をださないでくださいとか、シナリオはチームで協議して決めたことですので、勝手に変更してもらったら困るんですけど、みたいなことが積み重なって、「なんじゃこりゃ?」みたいな「日本」ができあがる。ハリウッドは産業として大きくなりすぎていて、全体を見通すのが大変なんだろう。その意味では、日本のアニメーションもその弊害に陥る危険は十分にあるかも。
 私は公開初日のレイトショーで観たんだけど、週末はすでに満員でチケットがとりにくい感じになっている。どこまでいくか楽しみ。