坪内祐三

靖国

靖国

  • 作者:坪内 祐三
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1999/01
  • メディア: 単行本
www.huffingtonpost.jp

 坪内祐三が亡くなったそうだ。61歳というから若すぎるとも言うべきだが、絶妙な享年という感じがした。これはもちろん赤の他人の一読者としての感想で、親族やお知り合いの方たちにとっては不謹慎極まりない言い方に違いない。でも、一瞬そんな感じがしてしまった。一時代の終わりって感じがするんだろう。この先どう転んでもろくな時代になりそうにないが、そこまで悲観することもないか。いずれにせよ、何かが変わってしまう気がする。
 この人と福田和也の対談が終わってから、結局、週刊SPA!の購読はやめてしまった。今はもう漫画雑誌みたいになってしまっている。でも、あの対談が終わったときももう潮時かなという思いもあった。
 それはやっぱり対談だからだろう。週刊文春小林信彦さんのエッセーは永遠に続いてほしいが、それは、文章だからで、対談はやっぱりどこかで「じゃあ」という区切りがあった方がいい気がする。
 もう古本でしか手に入らないみたいだが、『靖国』は良い本だった。わたしは文庫本で読んだ。文庫だけなのかどうか野坂昭如のあとがきがついていた。それからもわかると思うが、右とか左とかの紋切り型を超えて、靖国と近代の東京の成立を考察した名著だった。東京という都市を知り尽くしている著者だからこそ書けた本だと思う。たぶん、右とか左とかに偏っている人には気に入らないだろう。
 週刊文春の「文庫本を狙え!」で知って読んだ本も多い。週刊ポストの「坪内祐三の美術批評 眼は行動する」もよいコラムだった。