2023-01-01から1年間の記事一覧

『ほかげ』

不思議なんだけど塚本晋也監督の新作『ほかげ』は、山﨑貴監督の『ゴジラ-0.1』とは共鳴しあっている。いくつかのシーンは同じ場所かと見まがうばかり。 趣里さんの寝ている焼け残った居酒屋の周囲、ほんの半径2、3mしか写してないけど、それでもう町全体の…

『きっと、それは愛じゃない』 Xmas〜大晦日の間にちょうどいい映画 ネタバレ含む

クリスマスから大晦日までのこの時期って特別な呼称はないけど、なんとなく他の時期とは違う独特な雰囲気がありますよね。『きっと、それは愛じゃない』は、この時期にちょうどいい感じです。 クリスマスのほっかほかデートムービーではなく、お正月の大衆娯…

『PERFECT DAYS』

ヴィム・ヴェンダースの日本好きというか、小津安二郎に対する敬愛は、『東京画』などで知っているけれども、『東京画』は『東京画』と言いつつ、記憶に残っているのは笠智衆との対話って感じで、エッセイ漫画ならぬエッセイ映画って感じ。ヴィム・ヴェンダ…

『蟻の王』ネタバレ

食傷気味というよりもう完全に飽き飽きしているLGBT映画なので、珍しくイタリア映画で、ブライバンティ事件という実話を描いているってことでなければ観にいかなかった。それに「蟻の王」ってタイトルが当然ながら『蝿の王』を思い出させてちょっと魅力的だ…

『正欲』『市子』『隣人X -疑惑の彼女-』まとめてネタバレ

この3作品を並べて評するに意味があるかどうかようわからん。 でもまあ、立て続けに観ちゃったから、何となく共鳴する。3作品とも孤独な女性のストーリーとして観ちゃった。だから、『隣人X -疑惑の彼女-』も、上野樹里が演じる柏木良子の物語として観ちゃ…

『ぼくは君たちを憎まないことにした』

最近観た映画で泣けるって意味ではこの映画が一番だろう。 ただ、残念ながら他に言うことがない。 ある日街を歩いている主人公に女の子が近づいてきて 「代弁してくれてありがとう」という。 フランスが、あのテロの直後、イスラモフォビアからなる憎しみの…

夢枕獏さんのゴジラ

ああ、昨日書こうと思ったのに忘れてた。 夢枕獏さんが江戸時代に現れるゴジラを書いていた。 つうのは、現代を舞台にしたら、火器が先鋭すぎて、ゴジラを倒せない理由にリアリティがなさすぎる。ので、江戸湾から上陸したゴジラと平賀源内が対決する。 次回…

『ゴジラ-1.0』ネタバレ

封切からほとんど一ヶ月たって今更『ゴジラ -1.0』を観た。 近年、映画の公開数が多すぎる。で、観たいと思っている映画を見逃す。先月はひと月で12本観てる。平均して1週間に3本観ている。それに加えて、Netflixで『ザ・キラー』と『ミュンヘン』を観たのだ…

『花腐し』

『花腐し』は、松浦寿輝の芥川賞受賞作の映画化でもあるけれど、と言いつつやはり、荒井晴彦のシナリオという惹きが強いか。 というのは、『赫い髪の女』は、中上健次の短編が原作なんだけど、原作とはほぼ違うものだった記憶。 モチーフもピンク映画の終末…

『熊は、いない』『君は行く先を知らない』

イランには優れた映画監督が多い。その中で、ジャファール・パナヒ監督は、特殊というか不思議というか、イランの外から見ると謎な状態に置かれてきた。2010年に「イラン国家の安全を脅かした罪(?)」を犯したってことで、20年間の映画制作・出国・あらゆ…

五島美術館 「古伊賀 破格のやきもの」

根津美術館〜泉屋博古館東京と巡って最後に五島美術館へ。五島美術館は東急の五島慶太の美術館。 五島美術館は世田谷なので、あの広大な庭も、表参道の根津美術館のような驚きはない。五島美術館の庭に来るといつも、あの高低差を活かした水の流れを作ればい…

泉屋博古館 東京「日本画の棲み家」

根津美術館の後、泉屋博古館「日本画の棲家」。コロナ禍が去って気ままに美術館のはしごができるようになった。 根津美術館は東武電鉄をつくった根津嘉一郎の創設だが、泉屋博古館は住友なので創業は江戸時代に遡る。元は大阪の商家なので、泉屋博古館の本館…

北宋書画精華 根津美術館

日曜日、根津美術館。「北宋書画精華」の前期最終日だったので出かけた。天気もよかったし。 根津美術館 こうして見せると紅葉してるようだけどまだ全然。 根津美術館 これなんか見るとよくわかる。2021年11月27日の同じ場所は こうですから。 ちなみに、201…

『サタデー・フィクション』 ネタバレ注意!

『サタデー・フィクション』のこの「サタデー」は1941年12月6日の土曜日だ。日本で公開するかぎりは、この辺にもっとフォーカスした方が良かったのではないか。 しかも、原作は、横光利一の『上海』上海 (講談社文芸文庫)作者:横光利一講談社Amazonと、虹影…

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』ネタバレ

確かに、観ている最中は時間をわすれて惹きこまれるけれど、3h40minという上映時間はやっぱりひるませる。三連休でなければとても観に行かなかったかもしれない。 しかしながら,退屈な映画で眠気と戦う2時間と同じ値段で、スコセッシとデカプリオの長編叙事…

『パトリシア・ハイスミスに恋して』

パトリシア・ハイスミス、マルグリット・ユルスナール、トーベ・ヤンソンはレズビアン。 マルグリット・ユルスナールは、一般にそんなに有名でもないかもしれないが、トーベ・ヤンソンがレズビアンなのはずいぶん前から知っていた。 これに対してパトリシア…

『アンダーカレント』ネタバレ

今泉力哉監督が、マンガが原作の映画を撮った。是枝裕和監督の『海街diary』みたいな。 原作者の豊田徹也さんとは映画化が決まる前に会って4時間話し込んだそうだ。それまでも何度か映画化の話があったが断った経緯があるそうなので。 その時の話でなるほど…

『愛にイナズマ』ネタバレ

この三連休も映画三昧。週末はもともと映画か美術館だったが、円安、コロナの影響でよい美術展が減った一方で、こと今週に限っては観たい映画が多すぎる。そうでなくても、観たいのに観られていない映画もあり、観たけどここに書きもらす映画もありってこと…

『燃え上がる女性記者たち』『国葬の日』ネタバレ

この二つの映画を同日に観られたことは私にとっては有意義だった。 映画の内容とは直接の関係のない話を先にしておく。インドのモディ首相が推し進める、ヒンドゥー化政策に呼応して、ヒンドゥー原理主義の活動をする若者と、安倍晋三元首相の殺害現場に花を…

『コンサート・フォー・ジョージ』ネタバレ

『コンサート・フォー・ジョージ』が、突然って感じで映画館にかかり始めたので観に行った。 2002年11月29日、ジョージ・ハリソンの一周忌に、ジョージの妻オリビアと息子ダーニによって計画され、ジョージの親友、エリック・クラプトンの主催で、ロイヤル・…

フェミニズムと暴力について

フェミニズムに限らず、すべての運動がどん詰まりに来たなってわかるのは、言うことが教条的になった時だ。 私も世の例にもれず、ごくフツーにダウンタウン世代なので、「松本人志」って名前を見つけるとクリックしてしまう。 この動画もそんなふうにして誘…

『月』ネタバレ 補遺

宮沢りえが二役していたのかどうか気になる。 似ているのには気がつくけど、はっきり二役と確認できるほどではないのは、演出として実に正しいと思う。もしかしたらクレジットされてるかもしれないが、知らなくて、どうなんだろう?と考えてる方が楽しいし。…

『月』ネタバレ

この映画の題材となったやまゆり園事件の衝撃は憶えている人も多いだろうと思う。だから、それを虚構の作品として成立させることには独特の困難さを伴う。 辺見庸の原作がそうなのか、映画の脚色なのか知らないのだが、主人公がやまゆり園事件の実行犯である…

『私のプリンス・エドワード』『縁路はるばる』

『私のプリンス・エドワード』『縁路はるばる』っていう、香港の映画を観た。 なんというか「物語の終わった後」感が漂っている。そんな気がするのは先入観かもしれないけど。 カーキ・サムって人が両方に出ていてたぶんスターなんじゃないかと思う。好まれ…

『旅するローマ教皇』

ジャンフランコ・ロージ監督の『海は燃えている〜イタリア最南端の小さな島〜』が、なんと言っても傑作ドキュメンタリーだった。2016年度ベルリン国際映画祭金熊賞。 先立つ『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』も2013年度ヴェネチア国際映画祭金獅子賞。ド…

ガザ侵攻(最新版)について

ガザでパレスチナとイスラエルが衝突する。そして、アメリカがイスラエルを擁護する。これを何十年繰り返しているのか、これが何度目なのか、正確にわかる人は専門家だけだろう。 フツーの人は「またか」ってことになる。たまたま「2022年のギャラップの調査…

キュビズム展

YouTubeの「山田五郎オトナの教養講座」で国立西洋美術館で開催中の「キュビズム展」を紹介していたので観に行った。 それで改めて山田五郎さんの話がいかにわかりやすいか思い知った。音声ガイドなんかよりたぶんはるかにわかりやすい。予習になってよかっ…

『ジミー・サビル: 人気司会者の別の顔』

昔、ジャリズムが解散した原因のひとつに、オモロー山下が吉本の社員になれると思ってたってことがある。いざ解散して「吉本の社員になろうかなぁと思て・・・」と会社に言ったら「おまえアホか」と言われて「あわわわ」となったって話はけっこう有名。 それ…

『隣人は悪魔 ナチス戦犯裁判の記録』ネタバレ

フォードの工場で働いて車を作っていた退職した老人が、1986年、急にナチスの戦犯だと言われて国外退去処分になり、イスラエルで裁判にかけられることになる。 アメリカにそれ専門の機関があることに驚いた。専門性ゆえの良い面、悪い面はありうるだろうけれ…

『バーナデット ママは行方不明』

ケイト・ブランシェットが『TAR/ター』の前に撮っていた映画が、たぶん『TAR/ター』のヒットのおかげだと思う、今になって公開された。 『6才の僕が大人になるまで』のリチャード・リンクレーター監督作品なので、そうでなくても普通に日本公開されてもよさ…