2023-01-01から1年間の記事一覧
主演の門脇麦はこの映画の主人公が好きじゃないそうだ。 そりゃそうなんで、不倫相手の男が目の前で交通事故に遭ってんのに警察に通報せずに立ち去っちゃうのだ。そりゃ好きになるわけない。 不倫だから秘密にしなきゃならないし、白昼の東京だから誰かが通…
チェン・カイコー監督が1993年に公開した『さらば、わが愛 覇王別姫』は、中国映画の頂点であるだけでなくそれ自体が美しい麗峰だと思う。連なる山脈の果てにたどり着く最高峰ではなく、砂漠の果てに忽然と屹立する須弥山の頂なのだと思う。今の中国のことを…
『ミツバチのささやき』をTOHOシネマズの午前10時の映画祭で観た。町山智浩の解説付き。 町山智浩の解説がいいのは、個人的な感想を極力はさまないところ。つまり、ここが好きですとか、ここが〇〇っぽいとかじゃなく、作品の映画史的な位置とか、映画が作ら…
岡田斗司夫の『福田村事件』評を聞いていたら「あの竹槍の突き方では人は殺せない」だそうです。サイコパスを自認するだけのことはあるけれど、確かに、この映画のラストの30分ほどをサム・ペキンパー風に血しぶきが飛ぶリアルな演出にするとどうなったかな…
満席の映画館が久しぶりで、まずそれに感動した。満席だけでなくてチケットが買えずに帰る人もいっぱいいた。ミニシアターでこういうことってそんなに体験しない。遠方から来てる人もいたみたいで、帰りに駅までの道を聞かれた。 ドキュメンタリーで有名な森…
先ごろ(2023年7月16日)亡くなったジェーン・バーキンを娘のシャルロット・ゲンズブールが撮ったドキュメンタリー。原題は、「Jane par Charlotte」で、1988年の『アニエスv.によるジェーンb.(Jane B. par Agnès )』を引用していると思われる(劇中に言及…
まあ、ドキュメンタリーとしてはお話にならない。どこの誰だか知らない女性ナレーターが登場人物の心情を代弁したりはダメ。マイケル・ムーアや想田和弘があれこれ口出すのはかまわない。けど、どこの誰かわからないのがなんか言うのはダメ。それは選挙カー…
主人公の少女は、病気がちな妹にばかりかまう両親に疎外感からくる反発を覚えている。妹の病気がいよいよあやしくなり、普段は疎遠にしている祖母の田舎に、一縷の望みを託して訪ねていこうとするところから映画は始まる。 こういう始まり方をされちゃうと、…
綾瀬はるかって人は実はアクションスターでもある。『ICHI』とか『僕の彼女はサイボーグ』とか。そういうわけで、まだ動けるうちに、この分野での代表作ができればいいがなぁって思うファンも多かったに違いない。 それに『リボルバー・リリー』の舞台になっ…
主演のマーゴット・ロビーは製作にも関わっている。彼女は『I, Tonya』にも主演とともに製作にも加わっている。トーニャ・ハーディングは、たぶん、日本で思われてる以上にアメリカでは悪役だと思うのだ。そこにあえてフォーカスする視点に表現者としての信…
目が可視光線を捉えてるって意味では、絵はすべて光なわけで、このキュレーションを魅力的と思う人は少ないだろうと思うけど、ターナーの日本初公開作が来てるそうなので。 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 《光と色彩(ゲーテの理論)—大洪水の翌…
AirPodsProって一部リコールがかかってたって知ってました?。 最初に使ってたAirPodsProがダメになって、某サイトで安売りしてたのをもうひとつ買って使ってたのだけれども、そっちもダメになって、ダメ元で修理できるか検索してみたら、リコールがかかって…
『658km、陽子の旅』 菊地凛子主演のロードムービー。第25回上海国際映画祭で、最優秀作品賞、最優秀女優賞、最優秀脚本賞を受賞した。 監督の熊切和嘉の作品では、私は『海炭市叙景』と『ノン子36歳(家事手伝い)』を観ている。『海炭市叙景』は、佐藤泰志…
明らかに円安のせいで、最近は耳目を集める展覧会は減っている。 でも、時には美術館に行きたいので竹橋の常設展に出かけた。そしたら、意外にも「ガウディとサクラダファミリア展」が大盛況で長蛇の列。個人的には、サクラダファミリアを美術館で観るってど…
存在だけは知っていた「ポレポレ東中野」って映画館に今回はじめて出かけたのは、この映画は、これを逃すと他でやらないかもしれないと思ったからだった。 「パルバディ・バウル」の「バウル」の部分が一般名詞で、これは、「歌う托鉢僧」のようなものらしい…
最近に観た映画の中でいちばん心に残った映画というと、この『アルマゲドン・タイム』だろうと思う。 「アルマゲドン・タイム」という「?」なタイトルはザ・クラッシュの曲名からとっているそうだ。舞台は80年代のアメリカで、ジェームズ・グレイ監督の実体…
書家として生きているダウン症の女性のドキュメンタリー。金澤翔子のお母さんである金澤泰子は翔子が5歳の頃からひたすら文字を書かせたそうだ。 泰子自身もともと書道に関わっていたに違いないけれど、書道教室も自宅でできるってことで、翔子が生まれた後…
フランシス・マクドーマンドがプロデュースした『ウーマン・トーキング』。サラ・ポーリ監督。制作総指揮はブラッド・ピット率いるPLAN B。 これは、ボリビアの「メノナイト(メノー派)」と呼ばれるキリスト教徒のコミュニティで、2005年から2009年にかけて…
私はホックニーのフォトコラージュを見るまで、ピカソのキュビズムを理解できなかった。ホックニーのフォトコラージュを見て始めてキュビズムが理解できた。 1枚の絵に多数の視点を持ち込むと言葉で分かっていても、それが写真で実現されているのを見るのは…
金曜日のレイトショーが満席だったので、土曜日の朝になった。 宮崎駿の新作を見逃す映画ファンも少なかろう。 テーマ、モチーフ、キャスト、キーヴィジュアルに至るまで、事前にアナウンスしない戦略の意味はよくわかった。 つまり、これは宮崎駿の新作なの…
袴田事件だけじゃなくて、二股事件、島田事件、など、当時の静岡県警は冤罪事件量産警察として有名。それを声高に宣伝したいのかと思われる。せっかく冤罪で有名なんだから、地に落ちた信頼をさらに踏みつけにしたいって気持ちが働くのかな。www.youtube.com…
ホン・サンスの『小説家の映画』にでてきたあの女の子、ポスタービジュアルの真ん中にいる子、あれは、偶然ではなく、ホン・サンスの演出だそうだ。シネマ・サロンのYouTubeを見てたら、パンフレットの監督インタビューがあって、撮影前日に思いついたんだっ…
山下達郎がジャニー喜多川の性犯罪について何も知らなかったっていうのは全然不自然じゃないと思う。 というのは、このブログにも書いているけど、当時、私は週刊文春を購読していた。しかし、それは小林信彦さんのコラムを読むためで、他の記事に何の興味も…
伊藤沙莉が主演を務める探偵もの。タイトルを聞いただけで、永瀬正敏が探偵濱マイクを演じた『我が人生最悪の時』を思い出させる(それがまた『我が生涯最良の年』って映画のパロディだが)。探偵濱マイクはのちにTVシリーズにもなった。あの当時の永瀬正敏…
ヨーロッパ企画の映画は『曲がれ!スプーン』とか『サマータイムマシン・ブルース』とか観てた気がしたけど、あれはヨーロッパ企画の舞台を映画化したもので、正確にはヨーロッパ企画の映画じゃなかった。『12人の優しい日本人』が三谷幸喜の映画でないのと…
東京ステーションギャラリーで、「甲斐庄楠音の全貌」展が始まっている。 甲斐庄楠音は、速水御舟なんかと同時代の日本画家のうち、たぶんもっとも魅力的な作品のいくつかを残した画家なんだけど、土田麦僊という、今ではあまり知られていない(というか、甲…
小説家の映画』ネタバレ 上のポストカードは何とか特典でもらったヤツだけど、ポスターに使われてるシーンが本編に出てきたときは笑った。mimosafilms.com 窓の外のあの子が、演出なのか、通りがかりなのかだけど、どう思います?。 通りがかりだと思います…
アダマン号と言っても、セーヌ川に浮かぶ船みたいに見える水上建設なんだけど、精神病院のデイケアセンターで、「制度精神療法」ってのが行われている。「病院という場が病気にならぬようにしなければならない」というスローガンで実践されているものだそう…
反知性主義には少なくともふたつの意味があって、ひとつはただ「バカ」ってだけなので、これは置いておくとして、もうひとつの反知性主義は、前にも書いたが、三島由紀夫が「自分は反知性主義だ」と言ってしまうような意味での何かで、この場合「知性」と言…
二ノ宮隆太郎ってたぶんすごい人だと思う。 この『逃げきれた夢』が商業デビューらしいが、「商業デビュー」の言葉の意味がよくわからない。私が過去に見た『枝葉のこと』『お嬢ちゃん』は商業作品ではなかったらしい。とにかく、2作品とも素晴らしかった。 …