チャーリーとの旅

knockeye2004-05-22

週末は天気が良くなると言う話だったのだけれど、全くのウソ。朝から曇っているのでぐうたらをきめこんだ。ただ、富山ウエザーの侮れないところは、今にも降りそうな曇り空なのに、なかなか降らない。結局雨が降り出したのは、15:00だった。正確に記憶しているのは、バイクで買い物に出かけたとたんに降り出したから。バイクは買い物向きではない。しかし、この季節、乗りたくなる。


雨と決まったので、安心して雨読の体制に入り、先日、ネットで手に入れた『チャーリーとの旅』を読み終えた。スタインベックが、1960年、58歳の時にトラックを改造したキャンピングカーに乗ってアメリカを一周する旅行記。「チャーリー」は、彼の愛犬の名前。犬連れの旅は、野田知佑さんの専売ではなかったわけだ。


最初、ノーベル賞作家の余技として気楽な紀行文と読み始めたのだけれど、1960年のアメリカは、そんなに悠長ではなかった。特に南部を回る復路では、ちょっと胸が悪くなるような差別の実態に遭遇する。この部分を読んでいる時、帰国するイラクの人質を空港で待ち受けていた人々の映像が、ちらっと浮かんだ。差別感情は誰の胸にもあると思う。差別を「正義だ」と信じている人たちをみると背中に虫が這う気がするのはそのせいだと思う。こういう無名の人たちでなされる集団暴力は敵の正体が見えないところが何とも怖い。


それでもトラックでアメリカ一周というアイデアにはわくわくしてしまう。そのうえ、4ヶ月という期間が、微妙に私のロシアツーリングと重なる。私の場合は二ヶ月半だけど。つまり、一年とか二年とかの旅じゃなくて一シーズンの旅みたいな。リアタイヤがやばくなって、ガソリンスタンドで助けてもらうところなんか、あの気持ちはすごくよく分かった。どれだけ感謝しても足りないと思ってしまう。それから、長距離トラックの運ちゃんにだんだん親近感を覚えてしまうあたり。もちろん、スタインベックはマッチョなアメリカ男性であるから、私とは違うけど。


それにしてもこんなに面白いのに、絶版なんて惜しい。文庫になっていても良い気がする。