読書

今日は完全休養で、読書2冊。

一冊目は、先日にも書いた、小貫大輔さんの『ブラジルから来た娘 タイナ 15歳の自分探し』


ブラジルから来た娘タイナ 十五歳の自分探し


まずは、中学生の1割が不登校という、数字に驚かされてしまう。
教育現場の話って、私が若い頃から、全然進歩していないか、むしろ、後退しているみたい。一般常識に照らしても、笑えるネタに満ちている。学校時代の理不尽について、誰でもひとネタは持っているだろう。だが、その状態が、20年以上も変わらず、不登校が増え続けているとなると、笑ってばかりもいられないはずではないか?


小学校では、教師が権威を示せないため、授業中に席を立つ児童が目立ち、中学にあがると、今度は、教師が対話出来ないために、不登校が増える。「日本には、成熟のモデルがない」というのは、残念ながら本当だろうと思う。尊敬できる大人なんていない。むしろ、大人になればなるほどバカに見える。


著者の娘さん、タイナさんの日本生活は、結局ハッピーエンドにはならなかった。結局、彼女はブラジルに帰っていった。本の流れで行くと、最後には「父の祖国日本に適応できました」でないと、めでたしめでたし、にはならない。それで、この本も一度は、上梓をあきらめかけたそうだ。タイナさん自身は、ブラジルという帰る場所があって幸せだった。それがない日本の中高生は、不登校になるか、引きこもりになるしかない。
それを知っている親の世代は、そもそも子供を産まない。この国にはもう希望はない。


2冊目は、『ゴー外!!』小林よしのり 著
ゴー外!!〈1〉翻弄されない視座をもつ―小林よしのりの痛快“こき下ろし”SPECIAL
たまたま本屋で見かけたので買ってきた。小林よしのりというと、少しデマゴギックな気がして読んだことはなかった。まえがきに


「そう簡単に見過ごせない一件ってものがある。どうしてもはっきりさせておきたい。この時代の日本人が自己を欺いて恥じない堕落したものたちしかいないのなら、次世代の日本人のためにこの本を作っておく。
政治家からマスコミから知識人から一般大衆まで、ウソの責任感とウソの情報とウソの道徳観を振り回して、人質になった女こどもに魔女狩りのようにバッシングを繰り広げたあのイラク邦人人質事件。
それは4月に起こって、たちまち日々生起する事件の洪水に押し流されていったかに見える。だが見逃してはおけない。・・・」


私としても、あの事件の背景をもう少し整理したい思いで、買ってみた。

あのとき、政治家やマスコミが何を言ったか、三ヶ月しかたっていないが、読み返してみるのもいいだろう。それにしても、曾野綾子まで人質バッシングに加担していたとは。NHKの人間講座でカソリックの講義をしている時は、いい話をしていたけどなぁ。そういえば、賀曽利さんまでバッシング側に回っていたみたいだ。HPの閉鎖は、そのせいらしかった。ちょっと書き込みを見るのが怖かったので見なかったが。賀曽利さんともあろう人が。


小林よしのりも言論の人になって久しいので、その間のしがらみがいろいろあって、「左翼が」「右翼が」「親米保守が」「反米保守が」と、ちょっと煩わしい。初めて読む人間にとっては、それ、なくてもいい。


わしは本来、外人がこんなふうに日本はムラ社会だとか、タテ社会だとか、からかって「日本特殊論」を書くのはすごく腹が立つんだが、・・・(中略)
ただねー、本当のことをいうと、今回の人質バッシングには日本の特殊性が表れてはいるんだね。みんなで「自己責任」「自己責任」と口をそろえて責めたこと自体にね。「自己責任」という個人主義のキーワードを使っていながら、訴えていることはじつは「集団主義」なんだから。・・・(中略)
左翼が昔から言っている日本的な集団主義への批判、(中略)じつはそれは正しかったということになっちゃう。非常にみっともないことになってしまったね。

政府が、はじめから「自作自演」というシナリオに沿って、事件に対処しており、マスコミもそのちょうちん記事を書き続けた事実がよくわかる。
人質が解放されたのは、じつは、それまでに高遠菜穂子さんが現地で行ってきた活動が、イラク人にもよく知られていたからだと言って良いようだ。

阪神大震災の時にも感じたが、政府はとにかく何もしない。ちなみに、人質に後で請求された飛行機代だが、彼らは帰りのチケットを持っているので、断ったのに、政府がマスコミに接触させないために、無理矢理チャーター機に乗せたそうだ