エリザベス・キューブラー・ロスは「死とその過程に関する研究で、わたしがいちばん影響を受けた精神学者は、C.G.ユングだった」と書いている。

『死ぬ過程』を読んだとき、彼女をスイス人だと知らなかったか、もしくは、見過ごしていたのだろう。よく考えれば、初めて彼女を知ったのは、河合隼雄の本だったし、ユングを思い浮かべなかったのは不思議だ。

彼女は、まだ若い頃、チューリッヒの町でよくユングを見かけたそうだ。


医学校の一年生のころ、チューリッヒの市街を逍遙しているその伝説的なスイス人の精神医学者を、わたしはよくみかけた。歩道や湖のほとりをゆったりと歩くユングの姿は町の風物詩といってもいいものだった。いつも忘我の状態で深い思索にふけっているようにみえた。
ユングにあんまりさくさく歩いてて欲しくないのは確かだ。(^^;)

河合隼雄は、ウサギのブラッキーのエピソードに注目しているが、その重要な登場人物である、彼女の父親も興味深い。永世中立国で、家長になることは、もしかしたら、こういう事であるのかも知れない。スイスの男が全員こんなにもタフなのかどうかは知らないが、アメリカの核の傘に隠れて、戦争を放棄している日本の家長とは、違っていて当然な気がする。