『真犯人』

knockeye2005-01-22

真犯人 (講談社文庫)
『真犯人』パトリシア・コーンウェルを読んだ。推理小説から、どんどん動機が希薄になっていく、的なことを書いたけれど、ケイ・スカーペッタは、ヴァージニア州の検屍局長で、シャーロック・ホームズやエルキュール・ポワロのような「私立探偵」じゃない。次々に運び込まれる死体や犯罪に加えて、お役所の中のごたごたした人間関係や権力争いまでに巻き込まれる。犯罪者の動機なんかにドラマを求めるまでもないのだ。犯罪そのものより、それに巻き込まれていく人たちの方がよりリアルであるのは当然だ。
しかし、そうなるとちょっとした問題が起こる。シャーロック・ホームズみたいに、短編集にまとめられるほど、数え切れないほどのドラマにはでくあわさないということだ。一作目で小学生だったルーシーはもう大学生だし、マリーノ刑事は4作目にしてもうすぐ60である。このペースだと、10作目あたりでは、ルーシーがスカーペッタの二代目を襲名しないといけなくなる。次回作では、スカーペッタはFBIに職場を移しそうな気配だ。推理小説がリアルになった報いではある。