『ソーネチカ』

ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)
リュドミラ・ウリツカヤという、多分ここに書いておかないと思い出すのに苦労するだろう名前の女性が書いた『ソーネチカ』という中編小説を読んだ。ひさしぶりに穏やかだったし、路面は乾いていたから、バイクを動かしてみるのにいい機会だったが、日が暮れてしまった。エンジンが気がかりだ。寒い台所に降りて行くにも不平をつぶやいている私だけれども、冬のツーリングは嫌いではない。寒い日にバイクに乗ると細胞が若返る気がする。ただ、雪の降らない地方のみなさん、一度、雪捨て場に高く積まれた雪をご覧になって、それでもこの季節にバイクで遠出しようという気になるかどうか?私など、スタッドレスに4WDでもおっかなびっくりである。
『ソーネチカ』は、去年読んだ『ペンギンの憂鬱』と同じ人が翻訳したロシアの小説である。新刊タイプの本で、ブックカバーをはずすと、クリル文字の原題だけが小さく印字されている。本国ロシアよりも西欧で受けたそうだ。多分、東洋的な魅力を感じるのではないだろうか?読後感を私の過去の経験と参照すると、中編ということもあり、森鴎外の『高瀬舟』や『雁』が頭に浮かぶ。雪の日の読書には最適だと思う。

ところで、メーチニコフの『回想の明治維新』の方が『モーターサイクル・ダイアリーズ』より面白かったと書いたけれど、それは、メーチニコフを読みながら、ゲバラのことを思い出していたことでもある。ゲバラに詳しくないので、どうしてキューバにとどまるわけに行かなかったのかと不思議に思う。というよりむしろ、キューバにとどまるべきではなかったかというわだかまりみたいなものが心にある。もちろん、ことのぜひをああだこうだいうつもりはない。メーチニコフを読んでいて、こういう革命から革命へと、世界を転々とする人たちがいるんだなぁと思ったのだ。一年半しかいなかったが、メーチニコフは日本にいる時が、経済的にいちばん恵まれていたという。