『死因』

knockeye2005-02-09

死因 (講談社文庫)
パトリシア・コーンウェル『死因』を読んだ。1996年の出版でカルトを扱っている。だが、このカルトがあまりリアルに感じない。日本人としては、オウムという実在するカルトの「蓋然性のないリアリティー」というか、「笑いと紙一重の狂気」を目にしてしまったせいかもしれない。前作まで3作続けて追いつつけていた事件が一段落ついたので、読者としてはここでちょっと調子を変えてほしい気持ちはあった。出だしは、リッチモンドを離れて海辺で始まったので、そういう感じになる様子だったが、ちょっと舞台が国際的に広がりすぎてやや散漫な感もある。ここはひとつもっと小さめの事件で転調して貰いたかった。しかし、こんなことを日本の一読者が書いていると知ったら「じゃあ、お前が書けよ!」といいたいだろう。まさしく「ひいきの引き倒し」である。読者の要求がエスカレートしていくので、バーンと売れた次回作は難しい。
もちろん、面白くなかったわけではない。ウエズリー、ルーシー、マリーノといった登場人物もそれぞれに転機を迎えている。マリーノという人にそもそも「転機」というものがあればだが。今回、スカーペッタはマリーノとの相互依存を自ら認めている。これは、言ってほしくなかった気もする。読者は最初から分かっているのだから。実のところ、その関係がこの作品の最大の魅力なのかも知れないし。
ところで、吉村さんの恒例「田んぼキャンプ」の模様がBBSに投稿された。ちきんさんのBBSでは、川湯でのキャンプなども見られる。思い出して見れば、関西在住の時、この2月の連休に川湯にキャンプに行ったことがあった。2月頃の南紀は、あれこそ早春というにふさわしい。南高梅で有名な一面の梅も、こちらの梅とはまるで趣が違う。私も出来れば、春が来る前にキャンプに出かけたいものだ。しかし、北陸在住の今となっては、目下は合掌造りのライトアップでも見に行こうかとか考えているところ。まだまだ冬。