さて、上記の二冊だが、偶然にも、雰囲気が似ているかも知れない。どちらも扱っているテーマが、「偶然」かもしれない。小川洋子の水泳する弟(この短編小説集には、少なくとも3人弟が出てきたと思う。)と、村上春樹の書き下ろし短編、「品川猿」の妹は、どこか似ていないだろうか?妹の方は、猿のおかげで救われるのだけれど。しかし、このような猿の存在は、東京でなくても奇譚のはずである。「品川猿」というこの題名は「新宿鮫」のパロディーなんだろうか?ちょっと人を食ったお伽噺だが、小さなカタストロフィがあることは確かだ。