『イラクの小さな橋を渡って』

イラクの小さな橋を渡って
イラクの小さな橋を渡って』池澤夏樹・文 本橋成一・写真の小さな本を読んだ。2002年、まだ戦争が始まるかどうか分からなかった時の現地ルポ。今の時点から振り返れば、アメリカは、なかんずくラムズフェルドは、なにがなんでもやる気だったと分かっているが、この時点では、著者も、著者が出会ったイラクの人たちもそれを知るよしもない。
つまり、これはイラクの戦前のルポで、その後、フセインの圧政から解放された人民が、明るい戦後を迎えているはずだが、どうなんだろうか?
イラク戦争を見ていて、アメリカのやり方がよく分かった。あれと同じことを60年前の日本にやったのだろう。小林信彦さんのコラムに、「ただ、世の中が明らかに戦前(昭和十五年くらい)の空気になってきているように思える」と書いているが、「戦前」と「戦後」が違っているという考えが、すでに幻想なんだと思う。