『かくれ里』

かくれ里 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

かくれ里 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

お近づきのしるしに白洲正子の『かくれ里』を読んだ。女流作家という感じがしない。女性問題を扱っていないからだろう。まるで、そんなことには興味がないみたいだ。
ただの小旅行記みたいなものかなと読み始めたが、読後感としては本地垂迹説の解釈が一番印象に残っている。神道と仏教の政治的妥協に過ぎないと思いがちな本地垂迹説だが、つぶさに検証していくと、そこに日本人の土着的な信仰のあり様がうかがえて興味深かった。役の行者や泰澄大師など実在が疑われている人たちに光を当てている。迫力があるのは千日回峰行の始祖となった相応和尚が不動明王を見るにいたるところ。これを読むと神仏がどのように混交していったか納得できるし、一方で古い信仰が新しい神を必要とし始めていたことも納得できる。神仏混交という、神道、仏教、いずれの立場からも邪道としか取られないことに、価値を見出す目はするどい。
ところで、今回EX−P505を持っていった。写真は根津美術館の庭にあった芍薬、かさもなくば牡丹。