私たちの耳は聞こえているか?

長いゴールデンウイークが終わる。そのしめくくりに武満徹のエッセーを読む。鶴見俊輔の監修した「人生のエッセイ」という叢書のなかの一冊。

・・・しかし、近代において、人間は集団的意識から、あるいは共同体意識から自由な、自我を獲得した。(それをこそ近代と呼ぶわけであるが)集団からのこの離脱は、自己客体化ということであり、客体化された自己は、究極において「他者」に連なるものである。それによって、人間には新たな連帯の可能性が開かれるはずであった。

だが人間は隔絶化し、孤立を深めるばかりである。・・・

私にはまだ孤独が不足している。

ぼくたちの内部を鳥たちは飛び交う。
ぼくが伸びようと意志して外部を見る。
すると、ぼくの内部には一本の樹が生えている。

リルケの詩だそうだ。