
- 作者: 米原万里
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/10/01
- メディア: 文庫
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しかし、この本に関してはひたすら食い物の話である。吉田健一の『旨いもの・・・』以来の食欲増進系エッセーだった。なかでも読後印象に残るのは、「トルコ蜜飴の版図」。ヴァルカン半島から中近東あたりを旅すると、時たま本物にお目にかかるという「ハルヴァ」というお菓子。この本に引用されている料理研究家V・Vポフリョーブキンの絶筆『料理芸術大辞典・レシピ付き』によると、ハルヴァの製法は、紀元前5世紀から、カンダラッチと呼ばれる料理職人によって秘伝として受け継がれていて、職人の手になるハルヴァは今やイラン、アフガニスタン、トルコにしか残存していない。アフガニスタンといえば、ジョージ・W・ブッシュが蹂躙した国ではないか。果たしてハルヴァは無事だろうか。カンダラッチたちは手間のかかるハルヴァ作りに嫌気が差していないだろうか。わたくしみたいに酒も煙草もだめという甘党には非常に気にかかる。