ブラッカムの爆撃機

雨の日にはよいことと悪いことがある。
よいことは、よく眠れること。雨だれを聞きながら本を読んでいると、つい居眠りしてしまう。
この土曜日は休んだのだ。これまでは、お願いされたら、(あるいはお願いされるまでもなく)出ることにしていたが、これからは自分で決めることにした。休日出勤は極力避ける。あの休日出勤のお願いは、上司が自分の立場を慮ってしているだけで、仕事のことは二の次だということが、この一年で分かってきたからだ。前にも書いたが、いまさら会社人間にはならない。こちらで働いて、仕事人間と会社人間の違いが、感覚的にわかるようになった。
しかし、休日出勤しないとなると、仕事は平日に片付けなければならないわけで、必然的に残業は伸びる。(ちなみにサービス残業も伸びる。)そういう疲れは残るお年頃ではある。週休二日制を本格的に日本に導入したのは松下幸之助で、その最初のスローガンは「一日休養、一日修養」だということであった。「今日は休養したわけだ」と、誰にでもなくつぶやいて一日分のページをとじる。
雨の日の悪いことは、出かける気がしなくなることだ。早出の週なので、7時前には目がさめるが、暗い窓の外に絶え間ない雨だれが聞こえていると、布団の中に首を引っ込めてしまう。
この時期、上野にそそる美術展がかたまっている。ダリは人が多そうで敬遠したいが、ベルギー王立美術館展がよさそう。エルミタージュ美術館展は、サンクトペテルブルグ日帰りのリベンジを果たす意味でも観にいきたい。
他に、渋谷でエッシャー、世田谷でアンリ・ルソー。両国でやってるボストン美術館の肉筆浮世絵と、ちょっと遠いが佐倉に来ているジャコメッティは神戸で見た。
明日は晴れそうなので、このいくつかをはしごする予定である。最近ちょっと美術館に行っていなかったのは、映画にいいのが多かったから。と、まぁ忙しかったからか。『父親たちの星条旗』はオススメする。『太陽』は悪くはないが、オススメはしない。ちなみに二十年ぶりかに邦画のシェアが洋画を上回ったそうだ。

ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの

ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの

例によって、池澤夏樹の推薦。宮崎駿のマンガによる序と解説がついている。それだけで、これが面白い作品だと分かっていただけるだろう。

この子たちにはフィクションが必要だと彼は感じた。殺菌され無菌化された政治倫理のルールブックとしてではなく、この世を生き抜くためのサバイバルキットとして役立つ、フィクションが必要だと。

ピーター・ホリンデイルというひとが、作者ロバート・ウェストールについて書いた一節。
そういうフィクションは、わたくしにも是非ほしい。たとえば、「会社人間と仕事人間」という言葉の発見だけでも、価値の対立軸がはっきりするのだ。