ロシアツーリングレポートの写真が一部消えている。富山からこちらに引っ越してきたときに、富山のプロバイダーに割り当てられたスペースの写真は消されてしまった。いちばん簡単な回復方法としては、テキストの置いてあるサイトにフォルダーを作ってそこにアップすればよいのである。こう書いてみて「まったくそのとおりだなぁ」と思うのだけれど、この際だから、質量共に写真を充実させたいと欲を出して、lifeshotという写真サイトに登録したが、ロシアの写真をアップする前にほかの写真で容量がいっぱいになってしまった。無制限かと思っていたのである。この日記の頭のほうでランダムに掲載される写真に、ときどきモスクワのホテルなんかが混じっているのに気づかれる方もいるであろう。
そんなこんなで、いまだにロシアツーレポの写真は消えたままであったが、年も明けた事だし、そろそろ重い腰をあげて、五年前のポジをデジタル化してもらおうと、綾瀬のコイデカメラというところに出かけた。200コマ以上も自分でスキャンしてられないし、それに、あまり色がきれいに出ない。やったことのある人はわかるはずだ。労多くして功少なしという実例が、このフィルムスキャンというやつだ。
ところが頼んだ店がちょっとお茶目だったらしく、CD一枚に200コマしか入らないので、「じゃあ2枚で」ということにしておいたのを、ふつうこういう場合、まず200コマを先に焼いて、その残りをもう一枚に焼かないだろうか?この店は、残りのほうを先に焼いてしまって、「数えなおしたら残り205コマありました。5コマいらないコマを削ってください」と言ってきたのである。笑ってしまった。
しょうがないから店に出向いて、いらないコマを選んだのである。自分の写真からいらないコマを選ぶのはなかなかつらい。なぜかというと、わたしゃプロじゃないので、そもそも「要る」「要らない」という基準はない。できのいい悪いにかかわらず、思い出だから残しておこうというだけである。だから、「要る」「要らない」で選び始めると正直言ってほとんど要らないのだ。うんざりしてしまった。
しかし、なぜこのようなことが起こったかについては、気の毒な一面もある。1ロール37枚とか撮っているフィルムがあったのだ。ふつうフィルムというものは1ロール36枚と相場が決まっている。一眼レフで撮っていれば、間違いなくそのはずだ。ところが、わたしがロシアに持っていったカメラは現場監督なのだった。
「そうだ。現場監督だった」
と、改めて思い出した。一眼レフは持っていかなかったのだ。人間憶えているようで、いろんなことを忘れている。たとえば、今日は阪神大震災の日だった。ニュースを見るまで忘れていた。
あの日の5:46、わたしは西脇というところで働いていた。5:45が最後の休憩だったので、急いでエレベーターに飛び乗った若い子達が閉じ込められてしまった。
わたしの家は神戸の長田地区よりはるかに震源地に近かったが、帰ってみると何にもなっていなかった。割れた食器はもう片付けられていたし、自分の部屋も本が落ちていたくらい。活断層が走っているかいないかで大きく違ったらしい。それから二日か三日神戸は燃え続けて、会社は仕事にならなかった。出勤してもテレビで燃えている街を見ているだけ。
あのころはわが人生のどん底のひとつでボランティアもしなけりゃ寄付もしなかった。周りに知り合いもいない。ようするに住んではいたけれど、わたしの町ではなかったのだ。その2年かそこら後に富山に移ったと思う。