今年はヤツが

私は突然、花粉症が治った。もう何年も発症していない。この話をするとき、なぜか思わずほくそえんでしまうが、花粉症のつらさを知らない人間には、この気持ちは分かるまい。
私がかかっていた花粉症は、スギではなく雑草系で、花粉症まで貧乏くさいと、自嘲ネタのひとつにしていた。ピークはゴールデンウィークに重なる。今でも憶えているけれど、山陰のほうにキャンプツーリングに出かけたのに、テントを張ったあたりの草がアレルゲンだったらしく、鼻水と涙が溢れてとまらない。テントの中でバイクのゴーグルをしていたがどうしても眠れず、這々の態で撤収したことがあった。比喩ではなく、泣く泣くバイクを運転していた。あれが治ってしまったのだから、思わずほくそえむのも無理なかろう。
しかしだ、なぜ治ったのか分からないだけに、毎年いまごろになると、もしかして今年は再発するのではないかという不安がよぎる。それに、私は花粉症の王道、スギ花粉症の経験がない。そろそろそいつに襲われるかもしれない。また、実は治ったわけではなく、たんにアレルゲンの雑草が近くになかっただけかもしれない。
こういうことを書いているのは、実は、このところなんか鼻がむずむずしている。今年はヤツが帰ってくるかも知れんなぁと、健常者として奢り昂ぶったここ何年かを静かに反省してみている。