アトラス

アトラス―酒井若菜写真集 WAKANA SAKAI in MOROCCO (ヤングサンデーブックス)

アトラス―酒井若菜写真集 WAKANA SAKAI in MOROCCO (ヤングサンデーブックス)

酒井若菜の写真集を衝動買いした。
酒井若菜は、クドカンのドラマに出たりして、グラビアアイドルから、女優に脱皮したと思ったとたんに忽然と消えた印象だ。
たぶんその脱皮したころの写真集だと思うが、『アトラス』というモロッコを舞台にした写真集が、ネットや雑誌で見かけなくなった今から振り返ると、よい。
カメラマンは平地勲。週刊プレイボーイ酒井若菜を撮りつづけていたのは、平地勲だったらしい。そういうことって、購読でもしていないかぎり、意識しないものですよね。平地勲というカメラマンは、記憶している方がいるだろうか、ひと昔前はモノクロームのヌードを撮らせると右に出るものがなかった。あいだもも(・・・)の写真集なんかに、その片鱗が見える。カラー写真になると、悲しいかな、素人の目しか持ち合わせないわたしらには、他のカメラマンと差別化できなくなってしまっていたが、この『アトラス』は、モロッコという陰翳の濃い土地柄か、コントラストの強い写真に、モノクローム時代の持ち味が復活したみたいに見える。素人目にもそう見える。
そのコントラストの強い写真は、酒井若菜という女性の、その時を強く意識させる。その時がどの時なのかは他人には分からないが、そういう時が誰にもあるのかもしれないし、誰にでもあるというものではないのかもしれない。
ロッコ酒井若菜と平地勲と、その時の組み合わせがよい写真集を作り出したようである。
最近のグラビアアイドルは、写真集よりもDVDに力を入れがちだけれど、申し訳ないけれど、ちょっとひどいなと思う出来のものがある。(森下千里の『彩』はひどかった。ファンがいうのだから間違いない。)
すくなくとも、写真集はアイドルの作品であるとともにカメラマンの作品でもあるが、DVDの映像作家は、正直言って、プロと呼べる人がいないか、あるいはまだ少ないのではないか。アイドル写真集には、カメラマンの作家性が強く反映していると思うが、DVDはいまのところテレビ局の屋上に設置されたお天気カメラ程度だと思う。この先、プロが育まれないようだと、この世界は先細りそうである。