
- 作者: 田中小実昌
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2007/11/02
- メディア: 文庫
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「戦争がおわり、一年たって中支からかえってきたら、おやじが、おまえは東大の文学部にはいってる、といった。」
「ストリップ誕生」という章の冒頭の一文。まだ米軍占領下、occupied Japanのころのお話である。
MPの通訳をしている日系二世が、話の途中にとつぜん、日本の警察官をびんたする。それを見ていた著者は、あれはアメリカ流のビンタじゃない、日本式のビンタだ、と直感する。
公然と警官をビンタできる機会なんてめったにめぐってこないわけだから、この機会を逃す手もない。昨日まで権柄ずくで、円を四角といっていた連中なんだし。
戦争なんてほんとにバカなことだ。考えてみれば、このMPのビンタひとつのために戦争をしたようなものである。戦争のすべてが、そのビンタに収まるのだ。
渋谷といえば今はなんとなくおしゃれな町の気がするが、当時の東横デパートの4階は、ストリップ発祥の地であるらしい。今のBunkamuraあたりじゃないだろうか。
京都でストリップといえば、東寺DXだが(今でもあるか知らない)、どうもわたしは、何が面白いのかよく分からなくて、見に行こうと思ったことがない。舞台芸術全般に対する嗜好がないみたいだ。
多分この同じ時代に生きていても、ブルーフィルムとかに走ったほうではないだろうか。
劇場がつぶれた後、著者は易者になって富山まで流れていく。
ここにでてくる富山の親分さん、当時の富山県民はこんな感じじゃなかったかなぁと既視感に襲われる。東京もんを煙にまく感じがよく出ている。
東大出がやさぐれても鼻につかないのは、時代のせいでもあろうが、著者の資質によるところが大きいのだろう。