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自民党ガソリン税暫定税率を復活させ、道路特定財源を今後10年間維持する法案を国会で通しながら、その一方で、道路特定財源を来年から一般財源化することを閣議決定した。
まともな感覚では到底理解できないが、あえてまともな感覚で、これを読み解くならば、内閣消滅とともに効力を失う閣議決定は、国民の目を欺くための方便だと考えていいだろう。
すでに支持率20%台に凋落した福田内閣は、自民党内で死に体扱いされていると見ていいようだ。
原油価格の上昇が止まらない。
メルマガで紹介されている調査では、ガソリン価格が170円を超えても車を所有する人は47パーセント、200円を越えると14パーセントに減る。自動車業界にとっては大打撃のはずである。
2000年から2007年までに、20代の車の所有率は23.6%から13.0%、所有欲は48.2%から25.3%と共に大きく減っているそうだ。
そもそも、この若者の車離れにしても、道路をその使用者の立場からではなく、利権がらみで細切れに増殖させ続けてきた結果、走って楽しい道がどこにもないという、道路行政の貧困が原因のひとつにあると私は思う。R246の渋滞は、考えるだけで出かける気がなくなる。
本来、大きな発言力を持っているはずの自動車業界が、この件に関して何のアクションも起こさないのはなぜなのか考えてみるとたしかに不思議だが、それは、一方で、この国における道路族の隠然たる力の大きさを暗示しているかもしれない。
大前研一は、民主党は、年金問題においての長妻議員のような「ミスター年金」ならぬ「ミスター道路」といえる議員を生み出すべきだと提案している。
これを読んだ瞬間、亡くなった石井紘基議員のことが頭に浮かんだ。憶えておいでだろうか?道路公団民営化の紛糾する中で、なんとも解せない形で右翼に刺された民主党議員である。
本来、小泉改革において、郵政改革と道路改革は車の両輪であるべきだった。それは特別会計の入り口と出口だ。だが、小泉純一郎をもってしても、道路改革は郵政改革と引き換えに妥協せざるをえなかったのではないか。
道路族は、自分たちの利権のためには、平然と人命を犠牲にできることを、私たちはすでに見た。
町村官房長官の「暫定税率は環境のため」という発言に、多くの人は憤ったか、または失笑したと思う。しかし、それに続けての「ガソリン税一般財源化すると、環境税として今より高い税金をいただく」という発言に及んでは、その本意がやくざの恐喝と同様であると気づいた人も多いだろう。
その場かぎりの嘘が平気な人間を私は憎もうと思う。諫早湾干拓のときも、国土交通省に雇われた学者は「ほとんど影響がない」としたが、実際は多くの生き物が死滅した。
原油価格の上昇が経済に影響を与えないように努力するのが政治であるはずなのに、そのような議論はどこからも聞こえない。この国には、政治も報道も、事実上存在していないと思わざるをえない。