運命じゃない人

海老名にはふたつシネコンがあるが、このふたつ、まるで申し合わせたかのように、ほとんど同じ映画ばっかり上映していて、なんとなく隣り合わせのガソリンスタンドを思い起こさせる。
ところが、そのうちのひとつが内田けんじ監督の「運命じゃない人」を上映中。ちょっと珍しいではないか。気になりながら見逃した映画だったし、レイトショーの開演時間が現在の勤務状況にぴったりなのでつい観にいった。
公式サイトの監督インタビューに
「大学時代に観た仲間うちの学生映画が、たるいものばっかりだったんです。映画を撮りたい学生って、脚本よりも映像ありきの人が多くて、一本も面白いと思えるものがなかった。そういう自主製作映画ノリへの対抗意識は、すごくありました。」
とあるが、第14回PFFスカラシップ作品という出自もあり、でだし15分くらいは「甘ったるいなあ」と心で舌打ちしていたのだが、どうもすいませんでしたという感じ。甘いのはこちらだった。
インタビュアー氏が
「──時間軸の使い方などタランティーノを連想する人もいるかと思いますが?」
と聞いているが、それは私です。『レザボアドッグス』の文法かと。
これに対する監督の答えは
「もちろん大好きですけども、特に意識はしていないです。意識したのは、むしろ『男はつらいよ』とか。」
ほんとかよ。
でも、海老名まで自転車で出かけた甲斐があった。最近は、海老名くらいまでは自転車なのである。
この映画の上映は、このシネコンの快挙でもなんでもなく、内田けんじ監督の『アフタースクール』が、この5月24日から公開される、景気付けといおうか、広報宣伝活動のひとつらしい。基本的に脚本がしっかり書けて「やられた」という感じの映画が好きなので、『アフタースクール』も期待できそうである。まんまとはまってしまった。