『風味絶佳』と、『青春ピカソ』

風味絶佳 (文春文庫)

風味絶佳 (文春文庫)

青春ピカソ (新潮文庫)

青春ピカソ (新潮文庫)

すごく疲れていたらしい。
日曜日は一日寝て暮らした。わざわざ着替えて寝ているのだからあほらしかった。
起き出したのは日付が変わってから。世のダイエットに悩む人たちにお勧めしたい。物を食わずに一日寝ると、目がさめる頃には大概やせている。
読みかけの本だけは片付けた。上記の二冊。山田詠美の『風味絶佳』と、岡本太郎の『青春ピカソ』、言うまでもなく、奇妙な取り合わせで、奇妙な読後感になってしまった。岡本太郎が若々しく、山田詠美が老成して感じられる。
夏木マリで映画化された「風味絶佳」は、短編集の表題作なのだった。
山田詠美は、それこそバブル時代に一世を風靡した女性たちのカリスマだったと思うのだ。だからこそ、私には今まで読む機会もなかったのだが、「風味絶佳」という題名に惹かれた。それと、夏木マリのイメージ。
いわゆる「職人さん」たちの世界を題材に、作家生活二十年の職人技を発揮した短編小説群。そのなかで、表題作だけは毛色が違う。この小説だけ女性が自立している。それは、ちょっと奇妙なことだと思うのだ。
『青春ピカソ』は、ブリジストン美術館のミュージアムショップで買ったもの。
ヴラマンクピカソを徹底的に否定していた。それに、村上隆ピカソが嫌いだというし、どうも最近、反ピカソ的な雰囲気が身の回りにたちこめていて、そうなると、もともとよく理解もできていなかったものとしては、「ピカソなんてつまんないのかなぁ」という気分になってしまう浅はかさである。
今頃になってピカソを否定するなんて、あまりに安易だし、こういう本でも読んでピカソの熱みたいなものを掘り起こしたいと思ったのだ。
それに、ブリジストン美術館の常設展にはピカソのよい絵もあった。
ここに溢れる岡本太郎の若々しさに、まずは感動してしまう。山田詠美の身についた職人技と較べると対照的なのだ。そして、言葉の明晰さ。明晰だから正しいとはいえないが、明晰な論理は行動に直結する。創作としてほとばしり出る。そのことは、あやふやな正しさより貴重だと思う。行動しなかった人間は、後からいくらでも正しさをでっち上げられるのだ。