- 作者: 若島正
- 出版社/メーカー: 研究社
- 発売日: 2003/07/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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夏の間、隣と境界のフェンスに、舗装の隙間からつる性植物が生い茂るのを眺めて過ごしてきた。
三つ葉なので、アケビだろうと思っていた。つる性植物に関しては、葉が五枚ならムベ、三枚ならアケビ、という単純な思考回路しか持ち合わせていない。
ところが、近頃ふと気がついてみると、赤ん坊の小指ほどもない小さな豆の莢がいくつもなっていた。
写真をみていただければ、金網との比較で、莢の小ささがわかっていただけると思う。
意外なものが実るということ。ちょっと笑ってしまった。
ナボコフの『ロリータ』の名訳で一躍勇名を馳せた若島正が、読売文学賞の随筆・紀行賞を受賞した、英米の短編小説を巡るエッセー。
引用して紹介しようと思った一節が、帯に使われていた。つまり、誰にとっても印象的で、また、出版社が読者の興味をそそるだろうと判断した一節ということだろう。
ジェイムス・ジョイスの短編集、『ダブリン市民』は、まだ京都にいたと思うから、多分二十代のころに読んだはずだ。もちろん、若島正のように原文で読んだのではない。
その中で今でも憶えているのは「痛ましい事件」だけである。今読めばまた印象も変わるのかもしれない。
その登場人物、シニコー夫人について書かれている文章なのだが、この本が研究者としてでなく、一愛読者として書かれていることがよくわかる。
履歴書の趣味の欄に「読書」と書くことには、いつもやや危険を感じている。無趣味と書くのと大差ないのに、「読書、絵画鑑賞」、相手が構えるのを感じることがある。「旅行」とか書いておくのが無難なのではないか。
読書という趣味は多分他人と共有できない類のものではないのかと思う。
営業マンの絶対避けなければならない話題は、政治、宗教、野球だそうだ。多分、それと同じ意味で、読書という趣味も表明してはならないものではないかと思う。
ところで、今週号の週刊文春の「著者は語る」に西牟田靖さんが取り上げられています。『誰も国境を知らない』という新著です。