象と耳鳴り

象と耳鳴り―推理小説 (祥伝社文庫)

象と耳鳴り―推理小説 (祥伝社文庫)

よい短編を読みたいという気持ちはコレクターの心理に近い。
って、昨日も言ったか。
恩田陸が前世紀末にものした本格推理短編集。
本格小説」という大昔にあった言葉は今では笑い話だけれど、「本格推理小説」という言葉はまだ生きているらしい。確かにそそられる響きを持っている。
しかも恩田陸の本格推理小説というのだから自然に読書欲がわいてくる。
内容は期待を裏切らない。簡潔で要を得ていてヴァラエティに富んでいる。
私の読書歴から似た感じの物を探すと、小林信彦の「神野推理氏・・・」とかかな。
同じ安楽椅子探偵ものでも、バロネス・オルツィの「隅の老人」なんかより面白いと思います。
「おや、これは中原中也の詩じゃないの?」と思ったら、やっぱり中原中也の詩だった。ほかにも、曜変天目茶碗とか、アンセル・アダムスの写真(両方とも知らない)とか、道具立ても楽しい。
もしかしたら、短編小説は多読の賜物なのかもしれない。