破片のきらめき

knockeye2008-12-20

「心に病をきたし社会から遠ざけられた人たちが芸術を通して真剣に生きている姿、彼らの友情を謙虚に撮影したこのドキュメンタリーは我々を心深く感動させるフィルムである。
 10年間にわたる敬虔なこの制作に対し、ヴズール市民(観客)はドキュメンタリー映画最優秀賞を授与する。」
ヴズール国際アジア映画祭授賞式の言葉。
破片のきらめき」(仏題「 Le cri du cœur 」)は、2008年第14回ヴズール国際アジア映画祭(仏)観客賞(最優秀ドキュメンタリー映画賞)を受賞している。 
こんなにいい映画が、東京、横浜でしか映画館にかけられないのは残念だ。久しぶりに心から笑ったり泣いたりさせてもらった。
今年は、汐留でアウトサイダーアートの展覧会にも足を運んだので、こういう芸術が産み出される現場にも興味が湧いたのである。
しかし、あのアールブリュット展で見た多くの作品は、きっと孤独な製作であるのだろうのに対して、平川病院の中で安彦講平氏が主宰する造形教室は、副題にもあるように「心の杖として、鏡として」絵を通して癒しをえようとする人たちのゆるやかな集まりの場であるように見えた。
題名の「破片のきらめき」は、映画の中で安彦講平氏が口にする言葉。その言葉には、アトリエのメンバーが生み出す作品への、氏の思い入れが強く反映していると思う。
その破片のきらめきは、映画のそこかしこにもちりばめられていて、観客も魅了せずにはおかないはずだ。
医療の現場にカメラを持ち込んでいるのだから、そこに演出の入り込む余地はない。しかし、そのカメラの目の確かさに評価があってよいのではないかと思う。よいカメラマンが写したスナップにはどんな演出もかなわない。
フォトジェニックという言葉があるけれど、この映画にはシネジェニックという言葉を捏造したくなる。この映画に映し出されている人やモノは隅々まで魅力的である。
映画館ではないけれど、京都、大阪、高知などで上映する予定があるようだ。もっと各地で上映してほしい映画だ。