グリーンディール

投機マネーは全世界のGDPの六倍にものぼっていたそうだ。
そのバブルが一気につぶれたとなると、しばらくは立ち直れないと思うのも無理からぬところ。
ハッと気がついてみると、アメリカには世界に伍して戦える製造業がなくなっていたと、誰かが言っていたけれどどうなんだろう。
少なくともインターネット関連の産業は、アメリカがおさえていると思うのだけれど違うのだろうか。マイクロソフトインテルもアップルもアメリカなのだから。
ただ、これを考えるときに私が思うのは、マイクロソフトインターネットエクスプローラーを無料で配布してしまったのは、はたしてIT産業全体にとってプラスだったかどうか。
ネットスケープを叩き潰すための、あからさまなダンピングだったが、ともかく、あれから消費者にとってインターネット関連のソフトは「ロハ」が相場になってしまった。
私はブラウザーが有料であっても、インターネットは普及したと思う。500円でもいいから有料だったら、IT産業の市場はもっと大きくなっていたんじゃないかと思うことがある。
大恐慌への対策として、オバマが「ニューディール」ならぬ「グリーンディール」政策を打ち出している。ITの次は環境という発想は実に正しいと思う。
1990年代、日本のバブル崩壊のときに、私たちの国だって、世界一といわれる環境技術を活かして、産業構造の大胆な転回を図ることも可能だった。
だが、それをなしえず、あいも変わらずずるずると不要な道路やハコモノを造り続けてしまったのはなぜか。官僚や族議員が自分たちの既得権益を手放そうとしなかったからなのだ。そして今もその構造は変わっていない。
かつて、ゴア副大統領が情報スーパーハイウェイ構想を提唱してから、アメリカでインターネットが一気に普及したように、オバマの「グリーンディール」がアメリカを環境産業のメッカに転生させる可能性もある。困難だと思うけれども、彼らはトライしようとしている。
ところが、日本では改革が間違いだったという論調が力を持ち始めている。それでは聞くけれども、改革をやめてそれからどうしようというのか。グリーンディールでもなく、情報スーパーハイウェイでもなく、道路特定財源で高速道路網でも整備するつもりか。(いうまでもなく冗談のつもりだが、今ふと、自公政権ならほんとにやりかねないという、いやな予感が頭を掠めた。)
派遣切りのような雇用の問題も、産業構造が固定してしまっていて、新しい産業、新しい雇用が創出されないということがその遠因であることは言うまでもない。しかも、こんなことは1980年代からずっと言われ続けてきたことなのだ。
世界全体が大きく環境産業の成長に舵を切ろうとしているときに、道路特定財源の一般化もできず、公共事業といえば、ローズベルトのニューディールしかイメージできず、宮崎の高千穂あたりに道路を通したり、1960年代に計画したダムを強行着工したりしかやれないとすれば、新しい産業なんて生まれるはずがないと思うのだけど。