ビッグイニング

野垂れ死にを人生設計のひとつに数えておくと、生きるのはずいぶん楽になる。しかし、もちろん他人に薦めはしない。
今朝、テレビで田原総一郎と政治家何人かが「派遣」について話していたのだけれど、日本の政治家の話は進むにつれてどんどん小さくしぼんでいく。
鳩山由紀夫の主張を聞いていると、派遣法を製造業派遣が禁止されていたころの状態に戻せということらしい。
わたくし思うに、時計の針は元に戻せないし、もし戻せたとしても、それで解決ではなく、仕切りなおしに過ぎない。たとえば20キロ地点まで走ってきているマラソンランナーに、もう一度スタートラインに戻って走りなおせというのは現実的だろうか。
今の政治家はほとんどおぼっちゃまなので、派遣のことなどイメージできないと思う。派遣の問題は、派遣先ではなく派遣元にある。あいつらの稼ぎはどこからでてる?そのカネの流れに網をかけるべきなのだが、しかし、今回の派遣切りの問題はそれとは関係ない。
今回のは失業問題なのだ。全員正規雇用だったら解雇されなかったというわけではない。派遣という働き方にはいろいろ問題があるが、いま必要なのは派遣対策ではなく失業対策だ。
次に選挙を戦ったら民主党が勝つだろう。なので今はあまり重箱の隅にこだわらずに、まず大きなヴィジョンを示してほしい。鳩山由紀夫という人は喧嘩がヘタ。小泉純一郎という人の何がすぐれていたかというと喧嘩がうまかった。

私は日本ではむしろ人が解雇されなさすぎだと思う。つまり労働力の流動性がなさすぎる。転職が悪のように思われているので今回のような問題が起きたとき慌てふためいてしまうのではないか。
その背景には、ひとつには男女差別、ひとつには年齢差別、そして、既得権益の政策介入、それから、教育と労働のミスマッチがある。
男女差別についていえば、自民党の大臣の「女は産む機械」発言が記憶に新しいが(それとももう忘れた?)、そういうくだらない政治家がいるかぎり男女差別のなくなるはずがない。
一世帯にふたりの稼ぎ手がいれば、回避できる貧困のケースも多くなる。また女性が働きやすい環境の国では出生率も向上している。加えてその環境整備のための雇用も創出できる。働き手が増えれば社会構造が安定するのに、男女差別のために不安要因が増している。政治災害のひとつだろう。
年齢差別というと、年寄りが損をしているように思いがちだが、実際は、すでに崩壊している終身雇用というウソが若い世代の賃金を不当に抑制してしまっている。若いという理由だけで賃金が抑えられるのなら誰でも若い方を雇う。すでに終身雇用が無効である現実を踏まえて年功序列制は禁止すべきなのだ。
族議員と官僚による土建屋行政で公的資金が新しい産業の育成にまわらない。80年代から日本の環境技術は世界一といわれているのに、行政が環境産業をバックアップするどころか、政策の遅れでソーラーパネルの生産量でドイツに抜かれてしまった。また、無駄な支出のために国民が負担する借金が増え続ける。
終身雇用のもうひとの弊害は、事実上の教育を会社が行なってきたことである。若者のほとんどは、実際、就職するまで口の利き方も知らない。教育の現場は現実の社会と乖離している。教育という投資を社会が全く回収できていない。そのために教育に投資する金額も減っていく。
既得権益の問題は小泉政権がある程度まで攻め込みはしたと思うが、あっというまに巻き返された。今の状況は、自民党ではもう無理だということを示している。その意味では渡辺喜美の行動は実に正しい。
民主党は今度の選挙を敵失で勝つのではなく、大きなビジョンを掲げてビッグイニングを作って大勝しないと、ただ勝つだけでは主導権が取れない。
でも、今日のを見ていると選挙後しばらくグタグタになると覚悟しておいたほうがいいか。