ジャスミン

ジャスミン (文春文庫)

ジャスミン (文春文庫)

辻原登を、こないだうっかり「短編の名手」と書いてしまったが、ジョン・アービングよりずっとスケールが大きい作家でした。そして、これほどスケールの大きな恋愛小説は他に知らない。
天安門事件阪神淡路大震災を包括できる想像力など大概の人間は持ち合わせない。私はその現場近くにいたのだけれど、ただ打ちひしがれていただけで、思考停止に陥っていた。
ましてやそれをジャスミン茶の匂いたつ一編の恋愛小説に結実することなど。しかし、それをする人が小説家なんですね。
村上春樹が「卵の側」と言ったけれど、これがまさにそういうことかな。