民主党の小沢代表が連合の笹森前会長に「済州島を買っちまえ」と発言したという報道があったので、この間の出来事の裏側が大体読めた気がする。
ジャーナリストの上杉隆は、自身も議員秘書の出身で、いわば現場勘のある人だが、今回の大久保秘書の逮捕について、
「『やはりおかしいのではないか』というのが議員の会計責任者を務める大勢の秘書の実感なのである。」
と書いている。
その理由は、今回の逮捕要件として狙われたのが
「政治資金収支報告書に記載された、いわゆる『表のカネ』」
であること。
今までは「表のカネ」については、仮に後に献金者の違法行為が発覚しても、記載を修正するか、献金を返還すれば、事件になることはなかったのだそうだ。
ところが、今回はその猶予を与えず、いきなり逮捕だったのである。
小沢代表が「不公正な捜査」と言った背景には、
「自分こそが政治資金の透明化を率先してきたという自負もあったろう。」
と、上杉隆は書いている。
政治資金管理団体を陸山会ひとつにまとめ、金庫番に私設秘書でなくあえて公設秘書をおいて、政治資金の流れはガラス張りにしていた。
時効云々を言っているが、つまり、検察はその気になればいつでも調べられたはずなのだ。
上杉隆は、週刊プレイボーイにもコラムを持っているが、以上の記事は週刊文春に寄せられたものである。
奇しくも同じ週の週刊スパの巻頭コラム「勝谷誠彦のニュースバカ一代」でも、この問題を取り上げていた。
「今回の容疑はあくまでも『形式犯』である。かねてから政治資金の透明化を訴えてきた小沢さんとしては非は非として認めた上でむしろ検察の『手心』という不公平の危険さを指弾する方法もあるのではないか。」
と書いている。
「『なぜ、今』なのか。
(略)
『なぜ小沢さんの秘書』なのか。これについては自民党の議員関係者からも事情聴取との情報が流れ始めていてバランスをとるつもりのようだが、それも妙な話だ。」
そして
「民主党は官僚支配の打破を約束している。今回の案件は民主党潰しというよりも同党が政権を奪るという前提で、役人たちの意図を受けた検察が『手心』を外すことで、メッセージを発したという疑いを私は捨てられない。」
と結んでいる。
官僚支配の怖ろしいところは、国民に顔が見えないことである。
定額給付金関連法案の再議決前夜というタイミングは何をどう考えても異常だ。もしかしたら、その再議決で、小泉純一郎の欠席をきっかけに自民党内からも麻生下ろしの火の手が上がっていたかも知れない。
だから、その前夜に小沢代表の公設第一秘書を逮捕することで、党内外の反麻生の勢いを同時に削ぐことが出来たわけである。
麻生太郎という総理大臣は、役人にとっては非常にありがたい総理大臣であるようだ。国民の支持率が10パーセントあたりをうろうろしていても、意に介していないのは、役人の支持率が非常に高いためだろう。役人の支持率が調査できれば面白いだろう。なにしろ、天下りの禁止に最後まで抵抗したのが麻生太郎なのだから。
で、冒頭にあげた「済州島」発言の件だが、誰かが調子に乗ってやりすぎたのであろう。そんなことを言うはずがない。韓国メディアの反応もやや早すぎると感じる。多分、こういう波状攻撃がしばらく続くと思ったほうがよさそうだ。
12日の報道では、菅直人も検察批判を口にしている。
菅直人民主党代表代行(62)は12日、党本部で会見を行い、西松建設の違法献金事件に絡み
「なぜこの時期か、検察は国民に説明する必要がある」
と検察批判を展開した。小沢一郎代表の秘書逮捕に
「国民が選挙で政権を選択しようとしている時、大きな影響を与える形で権力が行使された。責任ある人が説明するのが適切」。
報道内容にも、押収された可能性のある資料を見ないと分からない内容もあるのではないかと疑問を提示。
「わざとリークする形で状況をつくっていくことがやられていたら、法と証拠に基づかない行動と思わざるを得ない」
とした。
一方、小沢代表の元秘書の石川知裕衆院議員が12日、東京地検の事情聴取を受けた。事務所を通じ
「知るところを正直に述べてまいりました」
とのコメントを出した。
また田中康夫も
新党日本の田中康夫代表は13日、西松建設の巨額献金事件で進退が注目される民主党の小沢一郎代表を滞在先の都内のホテルに訪ね「小沢氏の党運営と選挙態勢をつくる能力は、民主党内で非常に評価が高い。小沢氏なしでは政権交代はあり得ない」と激励した。
こういう危機にあたってこそ、政治家としてのセンス(というか「器」といってもいいだろうか)が試される。国民としては、誰がどんな発言をしたかよく見て憶えておけばいいと思う。
かねがね言っているように、もし、小沢代表に検察の手が及んでも、民主党は小沢代表で戦うべきだ。一番いけないのは、検察の手が及べば辞任するというメッセージを発すること。これは絶対に避けなければならない。
「敵失」で勝っても意味がないとずっといい続けてきた。その意味では、今回の危機はむしろチャンスかもしれない。戦うチャンス。危機のときにこそ、ぜひ結束して戦ってもらいたい。それでこそ支持者も応援しがいがあるというものだ。
ポンパドウルにこんな桜のパンが出ていたので買ってきた。
千鳥が淵のそばにあった山種美術館が、秋に渋谷区広尾に引っ越すために、五月からしばらく閉館だそうで、今、名残りの桜展ということか、「桜さくらサクラ・2009(今、「少年メリケンサック」を思い出してしまった)ーさようなら、千鳥が淵ー」という展覧会を開催している。あの美術館は速水御舟のコレクションが圧巻で、今回も御舟の桜が多数出展されるようだ。
常設展示室もなく小さな美術館だなと思っていたら、今の建物はそもそも仮住まいだったのだそうだ。新しい建屋で、御舟が常設展示されるとうれしい。