「ホノカアボーイ」

一週間の工事を経てリニューアルなった海老名のTOHOシネマズに「ホノカアボーイ」を観にいってきた。
今日は、オープン初日でしかもTOHOシネマズデイ、1000円均一ということもあってか、まだ少し雨の残る空の下、チケットカウンターの行列は、しっぽが建物の外に出て、さらにもう少しで階段からこぼれ落ちそうになっていた。
私はTOHOシネマズではもっぱらvitなので行列を尻目に殺して端末に直行。ピンポイントで座席指定できるようになったし、ワーナーマイカルズとちがって手数料も取られないのに、案外使う人が少ないのがむしろ不思議だ。
工事して何が変わったのかというと、プレミアムスクリーンが廃止になって、専用ラウンジが解放された。110席が172席に増えたそうだから、今までのリクライニングシートは取り払われたのだろう。そういえばラウンジに見たことのあるような椅子が置いてあった。
ホノカアボーイ」は、ひとことでいえば「ぬるい」映画だった。
一番ぬるいのは主役の草食系男子だが、この手のぬるい感じは「ノン子36歳 家事手伝い」とも共通していて、ぬるいながらにリアルなんだろうと思っている。
舞台はハワイで、いわゆる「沈没」している若者の話。「沈没」というとバンコクとかが定番で、ハワイは珍しいかも。バックパッカーの成れの果てなんかとは違うので、旅やつれしていないのが私には物足りないが、そのことは映画の欠点じゃない。
アマゾンで原作の評価を読むと、「ホノカアという街を歩いてみたくなりました」という声があるが、この映画を観てもそんな気にはさらさらならない。
映画の初めのころに明らかに現地の素人さんらしい人たちが映るがその人たちの笑顔が一番印象的。あの人たち以上の笑顔が出てこないのが残念だ。街の空気が映画に映し出されたらよかったと思うが、あまり伝わらなかった。
主人公レオはぬるいイケメン草食系男子というだけのことで、それ以上でも以下でもない。彼が担うはずのテーマが見えてこなかった。
レオと倍賞千恵子のビー、そして長谷川潤のマライヤの変則的な三角関係も突き詰め方が中途半端。
レオのぬるさが、一方では愛され、一方では人を傷つけているのだけれど、レオがそのことに無自覚なままなので、その先にドラマがすすまなかった。
原作では魅力的であるらしいビーのキャラクターがうまく描き出せていないのが何よりうまくない。
戦後70年の日本を生きているぬるい若者と、その同じ時代を、早くに夫と死別してハワイで生きてきた日系人女性を、同じ画面に納めながら、そこに何の化学反応も起こせないというのはちょっとどうかと思う。
光っていたのは上方漫才の大師匠二人、喜味こいし正司照枝、とくに喜味こいしはよかった。この二人が出るときだけ画面がいきいきしていた。
しかし、役者には文句は言えない。実際のところ、映画が何を描きたかったのかよく分からなかった。
小泉今日子の主題歌はよかった。