ヴィニシウス、つつじ寺

knockeye2009-04-19

ボサノバという音楽は、はるか昔からこの世にあったのかと思っていたら、実は、ある人とともに生まれ、そしてその人の生涯は、音楽と詩と酒と女に捧げられ、すでに全うされていたのだった。
その人の名はヴィニシウス・ヂ・モライス。ブラジルの正統派詩人にして、ボサノバの創始者、映画「黒いオルフェ」の原作者。自ら最も黒い白人と名乗り、生涯に9人の妻を娶ったブラジルの歌う外交官。その生涯を関係者の証言でつづった映画「ヴィニシウス」を観た。
「雪の下の炎」、「ヤッターマン」、「ヴィニシウス」と、このところ立て続けに観ている映画に共通するテーマは、土地に深く根ざした文化という点であろう。
ヴィニシウスの古い仲間が、彼の新しい曲が気に入って、アメリカのコンサートで歌わせてもらおうと電話口で歌詞を聞きながら英語に翻訳していた。
「私は生きたい、幸せになるよりも」
それを聞いていたアメリカ人が口を挟んだ。
「それは間違ってるよ。thanじゃなくてandだ。『私は生きたい、そして幸せになりたい』」
人生観の違いを感じて面白く思ったそうだ。
イパネマの娘」の大ヒットでヴィニシウスには多額の印税が舞い込んだが、彼は金に無頓着で惜しみなく与えた。
家には鍵をかけず、オープンハウスにしていたので、彼の家にはいつも人に溢れ、四六時中音楽が絶えなかったそうだ。
印象に残った言葉がある。
「友達は作るものではない、認めるものだ」
いい言葉だと思う。
ちなみに、プロデューサーはヴィニシウスの最初の妻の娘、スサーナ・ヂ・モラエス。映画にも登場して父のエピソードを語っている。

最近、やっと渋谷へのアクセスがわかってきた。
ほんの2駅の違いだけれど、さがみ野と海老名ではルートが違ってくるわけだった。下北沢で降りて井の頭線に乗ればいいんだ。
そのついでに、井の頭線の渋谷駅改札ちかくにアフタヌーンティーを発見した。本厚木にもあってあそこの紅茶とケーキはけっこう気に入っている。アールグレイがちゃんとアールグレイの香りがする。
ちょうどジブンドキでもあったので、帰りがけに寄ってみた。でも、渋谷の店はどういうわけかカレー屋さんみたいで、カッテージチーズのカレーとチャイのセットを食べた。けっこうおいしかった。本厚木の店にもあるのかな。なかった気がするけど。
そのまま帰るとちょっと中途半端な時間になりそうだったので、思いつきで向ヶ丘遊園駅で降りて、つつじ寺として有名な等覚院を訪ねた。まだ咲きそろわない株もあったが、そろそろ見ごろを迎えている。つつじのあざやかな赤は、午後の日差しにも負けない。山門のひさしをつつじの照り返しが赤く染めていた。