よき理想主義者

イチローが「野球オタク」だと自称しているインタビューを見たことがあった。
それにならえば、小沢一郎は「政治オタク」なのかもしれない。彼は、私が考えているよりはるかに強かであるらしい。「電撃辞任」のタイミングは振り返ってみると絶妙だった。
ただ、小沢一郎イチローと同じでチームに恵まれていないようだ。驚いたことに、後任の代表は全国規模の党員選挙は行なわず、早くも明日、国会議員だけで投票を済ませてしまうつもりなのだそうだ。
これをもし、鳩山由紀夫幹事長が決めたのであれば、あの男はアホであり、岡田克也が徹底的に抵抗しなかったのであれば、彼も無能であり、菅直人やその他の領袖がこれを承認したのであれば彼らは役立たずである。
何のための小沢辞任だったのか。
これでは、イチローのレーザービームを二塁手がカットしたようなものだ。
一昨日書いたように、鳩山由紀夫は、小沢一郎が辞任すれば自分も責任をとるとはっきり明言している。テレビの前で国民が見ている。当然自民党はそこを突いてくる。つまり、あなたでは選挙を戦えない。どうしてそんなことがわからないの?
ちなみに、その番組で鳩山由紀夫
小沢一郎に説明責任がある」
とも明言した。
私に言わせれば、その発言がそもそも間違っている。「潔白」であるならば「説明責任」はない。「潔白」を主張しながら「説明責任」があるというのは矛盾している。「検察にこそ説明責任があり、小沢一郎にはない」と主張するのが正しい。鳩山由紀夫は「小沢一郎にも検察にも説明責任はある」と主張した。自分で自分の首を絞めるようなものだ。内心彼自身が「潔白」を信じていなかったのだろう。
その結果、「小沢一郎は説明責任を果たしていない」という意味のよく分からない世論が一人歩きしたように思う。
そして今度はこの説明のつかない出馬と拙速な選挙。鳩山家の残念感は遺伝か。
しかし、小沢一郎の強かさは腰が強い。鳩山由紀夫岡田克也かどちらが勝っても小沢一郎の影響力がゆるぎないことは明らかのようだ。
先日、鈴木宗男の発言を紹介したが、そのとき、こうも言っていた。
「それと、もうひとつ大事なことは、小沢さんは大変な決断をしたんですよ。それは企業献金廃止、団体献金廃止ですよ。『今まで多額のお金を貰っていました、甘えていました、惰性でした、申し訳ありません』というね、国民に対する最高のお詫びなんですよ。
そうしたら、岡田さんあたりは即決で『代表の言ったことを守ろう、これが国民の声だ』といって決めたら流れ変わったですよ。せっかく小沢さんが大きな決断をした。それをちゃんと受け止めない、この民主党がね、情けないですね。」
「肝心の民主党自身がね。」
岡田克也という人はかなり厳密な理想主義者のように見受けられる。しかし、その彼でさえ、企業献金の即時廃止には踏み切れない。
よき理想主義者とは理想を掲げて現実と格闘できる人のことである。小沢一郎岡田克也のどちらが理想主義者なのか。
ただ、性格的に岡田克也は党首向き、小沢一郎は幹事長向きだと思う。そういうかたちになるとおさまりがいいという気がしている。
わたくし何度も言ってるように民主党を応援したいと思っている。ところが彼らがなかなか応援させてくれない。