ムーミン谷の十一月

knockeye2009-05-19

ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)

ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)

 ある朝早く、スナフキンは、ムーミン谷のテントの中で、目がさめました。あたりは、ひっそりしずまりかえっていました。しんみりとした秋のけはいがします。旅に出たいなあ。

 ほんとにふいに、どこもここも、しんみりとしてきたのです。あたりのようすは、もう、なにもかも、いままでとは、がらっとかわってしまいました。旅にでようと思いたった人には、いっときいっときが、身のちぢむ思いでした。

 スナフキンは、テントのくいをひっこぬきました。まっかな炭火をけしました。じゃまがはいったり、人にうるさくきかれないうちにと、スナフキンは、リュックを肩にひっかつぐまももどかしく、むちゅうで走りだしました。

 走りだすと、きゅうにほっとしました。葉のすみずみまで、のびのびとくつろいでいる、ぽつんと一本はなれて立った木のように、ゆったりした気持ちになったのです。テントをひきはらったあとには、テントのあとを教えるように、そこだけ、かれ草が長方形にかたまって、寒々とのこりました。

 あとで友だちが目をさましたら、こういうでしょうね。

「あいつ、旅にいっちまったよ。秋になったんだねえ」って。

 トーベ・ヤンソンムーミン全9冊のうち、一冊も読んでいない人は損をしていると思いますねぇ。

フィリフヨンカ、ミムラねえさん、ちびのミイ、ムーミン谷の物語にはいろいろと性格の違う女性が登場するが、トーベ・ヤンソンその人はどの女性に一番近いのだろうか。
ムーミンママは多分トーベ・ヤンソンにとっても母親だろう。
私はなんとなくトーベ・ヤンソンが一番自分を投影しているキャラクターはスナフキンだという気がする。