ラブ&ポップ

ラブ&ポップ―トパーズ〈2〉 (幻冬舎文庫)

ラブ&ポップ―トパーズ〈2〉 (幻冬舎文庫)

『トパーズ』は短編集だったが、この『トパーズ2』は長編、といっても、夏目漱石の小説にたとえると『門』くらいの長さ。だから中篇といってもいいかもしれない。
『五分後の世界2』より『五分後の世界』の方が面白かった私であったが、『トパーズ2』は『トパーズ』より面白かった。
『存在の耐えられないサルサ』で、作品に対するアプローチの仕方を学習していたという点も大きい。キャプテンEOの科白とか。
スピード感と圧縮感が、とてもよい。それと、主人公の独白の中に、明らかに作者自身と重なるだろうなと思える部分があるのも面白い。
たとえば、カラオケで援交オヤジが歌う『神田川』を聞きながらこんなことを思う。
「手拍子もとれないし、ビートがないのでからだを揺することもできないし、でもそれだけじゃなくて、それほどよく知っている歌でもないのに何かを思い出しそうになる。別にそれほど悲しかったり、楽しかったりしたわけじゃないのに、多勢でよってたかつて無理矢理悲しんだり、楽しんだりしていたような、悲しくもないのに泣いたり楽しくもないのに笑ったり、どこを探してもシリアスなことなんかゼロなのにみんなで真剣に悩みを語り明かしていたような、偽ものの思い出。」
『トパーズ』の方は、村上龍自身の手で映画化され、なぜかイタリアでヒットした。これは、DMMでレンタルしたのでこれから観る予定。
ラブ&ポップ』は、エヴァンゲリオン庵野秀明が監督して実写映画化されている。なかなか面白そうなのだけれど、どういうわけかDMMのレンタルのリストにない。買ってまで見る気はしないので、もうちょいとどこか探してみるつもりだ。