「しんぼる」

いま、MovieWalkerの「プール」の評価をみたら五段階評価で5が60%、1が20%。作家性の強い作品はこういうふうに評価が割れて当然なのだ。
松本人志の「大日本人」はそれこそ5と1にまっぷたつに割れていた。もっともあれは割れすぎで、あそこまで割れるということは説得力には欠けていたということだと思う。
何度も書いているが、大阪時代からダウンタウンを見続けているものとして、松本人志の天才にはかけらの疑いも挟むつもりはない。
かといってやることすべてが成功すると妄信するほどバカではない。
前回の「大日本人」は企画を聞いた時点で,松本人志らしくないと思った。ちょっと読める気がしたのだ。松本人志に関してはそういう風に思えること自体が珍しい。その意味で、むしろ、本気なのかどうか疑わしい気がした。
しかし、先日も書いたけれど、やっぱりすごいなと思うのは、きっちり修正してくる正確さ。
今回は観る前から面白い匂いがしていたし、観てもらえばわかるが、やっぱり面白かった。
私は「ひとりごっつ」の時点で、もう松本人志はテレビの枠をはみ出てしまったなと感じていた。「ひとりごっつ」は面白かったのだけれど、テレビ的ではなかった。ただ、映画を撮ると聞いたときに、その資質が映画的なのかどうかはよくわからなかった。
大日本人」は、どちらかといえば「ごっつええ感じ」の残響が感じられるのではないか。私があれを観にいかなかったのは、その部分はもうテレビでやりつくしたと感じていたからだ。
「しんぼる」は、見事に映画にアジャストしてきた。かといって、映画のお約束におとなしく従ったかといえばそうではない。こんな映画は見たことがない。そこが松本人志のすごいところ。まだこの人は底知れない。そして、それでこそ松本人志である。